M&Uスクール

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今週の喝 第957号(2023.09.25~10.01)〜「感性置換」こそ芸術の生命〜

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〜「感性置換」こそ芸術の生命〜

 第一回目のPBI(サイコ・バイオニクス・インシュティチュート:精神生体工学研究所)の授業では、私も我が妻・裕子も全くスプーーンは曲がるどころか、頑として固いままでした。我々二人は、ともに音楽を志しているという単純な動機から、そして私はフルート(管楽器)、妻は歌手という呼吸を使うことが主流の演奏法ですので、「集中」「呼吸」には些(いささ)か自信を持っておりました。また私は作曲を生業としておりましたので、イメージすることには何ら抵抗はありませんでした。
 作曲という作業は(編曲も含めて)、例えば“海”がテーマとしますと、海の描写(例えば“波”や“深海”)をシッカリと思い描き、その風景や心の描写した抽象的な情景を、音に置き換えて行くのです。私はこれを「感性置換」と呼んで、作曲や編曲を学びにくる人達にレッスンしておりました。「感性置換」とは、私たちが持っている六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)で感じる感覚・六境(色・声・香・味・触・法)の中の何れかに置き換えることを言います。
 目で見た“海のさざ波”ならば、「見たものを自分で感じた感覚」(音楽にするならば“音”)に置き換える作業が感性置換です。私の家に黒田保画伯が書かれた「巴里の街角」という単なる壁だけを緻密に書いた絵画がありますが、その絵を凝視していると、ついさっきまで、
 「その壁の前に男性の夜の相手をする(いわゆる娼婦)がその壁にもたれていたけれども数分前に商売が成立して二人で立ち去った跡」
が感じられるのです。その上、私も一度しか訪れたことはありませんがパリの町のどんより曇った空の下の空気感まで伝わってくるから不思議です。この事を、生前、黒田画伯に伺ったところ、「忠さん、その通りや!パリにいたときにその現場に居合わせた。その時のことを思い出すと、筆が自然に動いたよ」
芸術家というのは、音楽家であれ美術家であれ、文筆家であれ、その感性置換を自分のモノにして、自分の心を表現するのです。

 

★★雑念の除去こそ一番の心の安寧!★★

 今だから分かったようにこのように言っていますが、ここに至るまで(芸術とは何かと分かるまで)中々、良いメロディー(自分が感動するにいたるもの)は浮かんできませんでした。
 そう言えば、高校生の時に報徳学園高校から応援歌「勝利の神は手を延べて」をテーマにした行進曲の作曲依頼を受けた時を振り返って見ると、報徳の高校球児たちが大きく手を振って甲子園球場を堂々と行進しているところを想像(イメージ)した時、アッという間にイントロ(前奏)が浮かんできたのを思い出します。
 また、我々M&U SCHOOLのホームグラウンドである心華寺の食事をする部屋に、私の恩師である伊勢昌史先生の夕暮れの日本海を描写した絵画が掛けてありますが、その絵の近くに行って近づくと不思議と海の匂いが私の鼻先を掠(かす)め、またその海の上を優しく吹く風を感じます。
 芸術とはそれを提供する側と受け取る側、双方の感性置換が成せる人間独自の素晴らしい世界なのです。
 ロシアに有名な作曲家達「ロシア五人組」と呼ばれる最高の作曲家仲間達がいました。バラキレフ(代表曲:東洋風幻想曲)、キュイ(長靴を履いた猫)、ムソルグスキー(展覧会の絵)、ボロディン(韃靼人(だったんじん)の踊り)、リムスキー=コルサコフ(シェヘラザード)以上の五人ですが、彼らの作品を聴くと、その情景がそれこそ絵を見ているように浮かんでくるから不思議です。この中でも「展覧会の絵」はムソルグスキーの友人で画家のハルトマンの死を悼み、遺作の展覧会に行ったときにその絵から得た霊感をピアノ曲にしたものです。その作品を後年、フランスの作曲家ラヴェルがオーケストラ用に編曲してより有名になりました。
 私が得意とする演歌を含むポピュラーソングは、そこに歌詞があるため、その歌詞の内容に沿ってメロディーをつけてゆけば良いのですが、純音楽と呼ばれる交響曲など楽器だけで演奏するものは、そこから聞く人達に想像力を掻き立たせ、恰(あたか)もその主人公であるかのように聴衆の心を誘導してゆくことが重要なのです。この規律を初めて破ったのが、クラシック音楽の“楽聖”と呼ばれるベートーヴェンです。彼は晩年に作曲した交響曲第9番ニ短調で、このオーケストラ曲に混声四部合唱と四人のソリスト(独唱者)を加えて、当時のドイツでとても高名であったシラーの詞を元に、交響曲に歌を入れたのです。もちろん現代では何の抵抗もなく、年末になればお祭り騒ぎのように演奏されますが、その当時は、交響曲に我々人間の感性を抑制する可能性のある“歌詞”を付けたことで賛否両論の渦が巻き起こりました。

 

  この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/