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今週の喝 第938号(2023.05.15~05.21)〜当時のモーツァルトの生きざまは……?〜

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当時のモーツァルトの生きざまは……?

  さて、ゲシュタルト的見地(反対側からの考察)で我が師宇宿先生が、大師匠近衛秀麿先生にされた仕打ちを私なりに考えて見ました。今だから分かるのかも知れませんが、宇宿先生の態度や考え方が全て完璧過ぎたのかも知れません。近衛先生の家の門を叩いて、「指揮者になりたい」と宣言したことすら、近衛先生が、その師匠ベルリン・フィルハーモニーの常任指揮者であったウィルヘルム・フルトべングラーに弟子入りしようとしたときも、中々許してもらえなかったのです。そんな折、ストレートに「弟子にして欲しい!」と輝く眼で端的に言われたなら、それは意地悪の一つもして、
 「この世界は、そんなに生やさしいものではない」
と思わせておこうとするのは、尋常の人間の考え方です。しかし、自宅に呼んでおきながら、一時間以上置いてけぼりにされ、自分のスケジュールを優先にするのは、された方になったらたまりません。
 そんなやり取りがありながらも、ようやく対話が出来るようになったある日のことです。宇宿先生は、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」のスコア(総譜:全てのパートが書かれている楽譜)を持参し、
 「近衛先生、ここはどのように解釈すれば良いのでしょうか」
と尋ねたそうです。すると先生は、
 「ちょっと待って下さい。モーツァルトはこの時代どういう生活をしていたのでしょうか。どういう手紙のやり取りをしていたのですかね」
と、逆に質問されました。不意の質問に宇宿先生は面食らい、「わかりません」
と答えるしかなかったのです。すると近衛先生はスコアをゆっくり閉じて、「お帰りなさい!」
近衛先生は徹して教えない師匠でした。これもゲシュタルト的に解釈すると、音楽はその人間の生活の中から抽出されるものである故、その人間の持つ感性や生きざまが分からない限り(音楽だけ分かろうとしても)そのような上辺では何も解釈できない!ということをおっしゃりたかったのです。

 

★★近衛先生のLessonは、直接肌から薫習するまで訓練!★★
 近衛先生は、「分かりません。だから教えて下さい」には、絶対に答えて下さらない。どんなに時間がかかっても自ら答えを見つけさせよう、そういう考えの持ち主だったのです。後年、私が宇宿先生に音楽を教わったときも安易な質問には絶対に答えて下さいませんでした。
 このように、自分の手で探り探って見つけ出したものは、それなりの形が明快に現れて来るものです。それがある時、宇宿先生の何気ない言葉から感じ取れた私がいました。従って、苦しみもがいても決して安易に師に迎合するようなことはするまい!と考え、もだえ苦しんでいる姿を素直な形で見て貰うように心を切り替えました。
 そうしたら、宇宿先生自らご自分が体験されたエピソードを、食事をしながら語って下さいました。それは、宇宿先生が指揮活動を開始して、間もない頃のことです。
 宇宿先生が、東京労音(勤労者音楽協議会の略)で始めてベートーヴェンの第九交響曲を指揮することになって、
 「練習を聞いて頂けないでしょうか」
とお願いしたときのことです。先生は、
 「ようござんす。聴きましょう。明朝、迎えに来てください」
とおっしゃいます。当時、宇宿先生は杉並区高井戸に住んでおられ、練習会場は上野の東京文化会館。そして、近衛先生は当時、赤坂がご自宅でした。近衛先生を迎えに行くには、相当早く杉並の家を出なくてはなりません。宇宿先生は、とにかく近衛先生を文化会館までお連れして練習に入りました。近衛先生はティンパニーの側でジックリと練習を聴いておられました。そして、練習が終了し、宇宿先生は近衛先生に聞いて下さったお礼を述べ、
 「赤坂のご自宅までお送りします」
と伝えたところ、
 「私は用があるので、タクシーで帰ります」
とおっしゃるのです。何度もそこまでお送りしますと押し問答しましたが、 「タクシーで行くから良い!」
と断られ、近衛先生はご自分でタクシーを拾われました。近衛先生が練習場を出られて小一時間ほど経った頃に、宇宿先生は近衛先生のご自宅に電話を入れ、お送りできなかったことを伝えられました。すると奥様は、
 「主人はもう帰っていますよ」
という返事!近衛先生は、どこにも寄らずに、真っ直ぐ家に帰られたのです。その時宇宿先生は、ハッ!と気が付きました。先生は、
 「朝、私にあえて迎えに来させたのだ!」と……。
この意味は、ステージに立つものなら理解できるのですが、敢えて解説しますと、
 「練習の前、指揮者はこれから多くのプレーヤーを引っ張らなければならない精神的プレッシャーが波のように襲ってきます。そんな精神的余裕のないときに、近衛先生は敢えて、私を迎えによこすことで、指揮者にとって重要なことを身を以て、教えようとされたのでした」

この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/