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今週の喝 第937号(2023.05.08~05.14)〜近衛先生と宇宿先生は阿吽の呼吸〜

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成功への道しるべ!この世は全て催眠だ677

近衛先生と宇宿先生は阿吽の呼吸

  さて、我が師山口(宇宿)先生は、久しぶりにオーケストラのコンサートを聴きに行って、いつもと違う感覚に襲われました。そして、その興奮が覚めやらぬ間に先生は、近衛秀麿先生
 山口「先生、僕は指揮者になりたいです」
すると、近衛先生はやや冷ややかな眼差しで次のように言いました。
 近衛「うふふふ、地下足袋をはいて土方(どかた)(建築土木の日雇い労働者)になりなさい。そうすれば土方(どかた)が使える」
と言って、山口の存在を忘れたかのように、スタスタと先に歩いてゆかれます。
 その瞬間、山口(宇宿)は近衛先生が何のことを言ったのか、全く分からなかったといいます。その瞬間、山口の脳裏に閃きが起こりました。そして、近衛先生の鞄を持ったまま、先生めがけて猛烈にダッシュし、「あっ、そうだ!」
 山口「先生、オーケストラマンになれということですか」
 近衛「おお、よく分かりましたね。ただしですよ、主席になりなさい。いいオーケストラの主席ですよ」

この師匠の一言で、山口(宇宿)先生の歩む道は決まったのです。生前、宇宿先生はこの時のことを話すとき、遠き虚空を見つめて、
 「もし、この師の言葉を聞くことがなかったら、私は指揮者になるのに、安易な道を辿ることになっていたかも知れない。近衛先生は、それを許さなかった」。
つまり、
 「現場を知らずして、現場監督になるな……。後で苦しい思いをするのはお前だぞ」
近衛先生の短い言葉で、ここまで察する師弟関係に私は何度も感動したのを覚えています。

 

★★初対面はたった十数秒!★★
 この宇宿先生の気付きは、なにもオーケストラに限ったものではなく、組織運営の方程式のようなものです。現場の経験が豊富、または現場のことを知り尽くしたリーダーほど判断・指示は的確で、現場からの支持も得られやすいものです。従って、組織の隅々までこまやかに掌握し、スムーズに人を動かしていくことが可能なのです。正確に言うと“動かす”のではなく、信頼関係の上で、“人が動いていってくれる”のです。
 「一流のオーケストラマンになれ!」と指針を与えられた宇宿先生は、それまでよりがむしゃらに寝食を忘れて勉強してゆきました。
 「必ず指揮者になる。だから、その為に一流のプレーヤーに。オーケストラマンになるんだ」と。
 そして、やがてその努力が実を結びます。東京芸大4年の時、定期演奏会で学校の代表として、ソリストに指名されるまでに実力を認められるようになったのです。
 日比谷公会堂で昼夜二回、日本初演のリスムキー・コルサコフ作曲「トロンボーンコンチェルト」を演奏し大成功をおさめます。この演奏が評判になり当時のオーケストラ界で一躍、有名な存在となりました。これを機にプロオーケストラから次々とオファーが掛かり、結局NHK交響楽団に入団を決めました。

 宇宿先生の口癖でしたが、
 「私は近衛先生に弟子入りしたわけだが、先生から音楽に関して何かこれということを教わったことはほとんどなかった」
これはどういうことなのでしょうか。音楽よりも大切なこと、それは近衛先生の哲学的思考だったのです。その人柄や教育哲学を宇宿先生から伺ったエピソードでご紹介します。

 宇宿先生が、初めて近衛先生のお宅を訪問したときのことです。宇宿先生は約束を頂き、指定された時刻に緊張しながら近衛邸の門を叩きました。すると、でて来たお手伝いさんは、
 「先生は今、お留守でいらっしゃいません」
という応答です。宇宿先生はガックリして、
 「先生に宜しくお伝え下さい」
と持参した虎屋の羊羹を手渡しして帰るしかありません。そして、門を出た途端ガチャンと玄関の扉を閉ざされたのです。まさに、門前払い!です。
 ため息をつきながら、それでも諦めずに近衛邸の周りをぐるっと裏庭の方に回ってみると、なんと近衛先生が大きな秋田犬二頭を連れて庭を散歩しているではありませんか。
 そんな事が二、三度続いた後、何度目かの訪問の時、ようやく家の中に通されました。通されたのは近衛邸にあるオーケストラの練習場です。
 今度は、先生が中々姿を現しません。大きな柱時計の振り子の音だけが虚しく響くのみで、いっこうに先生は姿を現しません。一時間ほど待たされたところで、近衛先生が二階からゆっくりした足取りで階段を下りてこられたのです。近衛先生は、宇宿先生の顔を見るなり、
 「何でしょうか」
 宇宿先生は一時間待って「何でしょうか」と投げかけられ、絶句してしまいました。そして、近衛先生は、
 「私はこれから用が御座います」
と言うなり、行ってしまわれました。苦労して掴んだ先生との面会は、ほんの数十秒で終わってしまいました。

 

  この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/