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今週の喝 第612号(2017.1.9〜2017.1.15) この世は全て催眠だ(354)〜常識を覆す「柔能く剛を制す」の思想〜

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この世は全て催眠だ(354
〜常識を覆す「柔能く剛を制す」の思想 

 干支(えと)にも密接な関係のある“道教”は、「道・徳・無為・柔」の四本柱で出来ています。その中の「無為」は、絶対(中心)に対して相対(主体)で挑む姿勢にその根本が在り、これは今この紙面に掲載している“催眠法”の極意でもあります。
 そして、この道教をより体現化した(実生活に沿った)ものに茶道が在り、そこに流れる精神は、大自然の営みを絶対として、それに沿って、我々人間の側がそれらの営みに対して即応する中に、愉しみや喜び、美しさを見いだす芸術です。
 「茶の本」の著者・岡倉天心は、お花の師匠のことを、「鋸と鋏で武装した恐ろしい悪魔だ」と、花の側から見て“華道”を非難しているように、自然なるものの美しさを見いだすことこそ“茶道”の根本原理であると喝破しています。つまり、絶対に対して相対とは、「決して逆らわない=無為」と説いているのです。
 道教の始祖の一人である老子は“柔の思想”を展開しています。そこには、
「小を見るを明と曰(い)い、柔(じゆう)を守るを強と曰(い)う」
「人の生くるや柔弱、其の死するや堅強。万物草木の生くるや柔脆(じゆうぜい)、その死するや枯槁(ここう)。故に堅強なる者は死の徒。柔弱なる者は生の徒。是を以て、兵(へい)強(つよ)からば即ち勝たず。木強からば即ち共さる。強大は下に処(あ)り、柔強は上に処る」
 簡単に言うと、人間が生きている時は肉体は柔らかいけど、死ねば硬くなる。全ての草木も同じだから、硬くて強いというのは「死」に行くもの、柔らかいことが「生」の証しだから、軍隊が強いと言うことは負けることを意味する。それは木が丈夫であれば材木にされるのと同じ。だから「柔能く剛を制す」と、私たちの常識からは真反対のことを宣っています。
 
★★「押さば引け、引かば押せ」★★ 
 老子は、この思想を解説するのに「天下に水より柔弱なるは莫(な)し」と水を引き合いに出し、その「流動性、順応性、変幻自在な動き」が堅強を崩せる要素であると指摘しています。
 この天地自然の理から生まれた武術が「柔術」です。古流柔術の伝書に、
「降るを見れば積もらぬさきに打ち払え、風ある松に雪折れはなし」
「乗り得ては波に揺らるる蜑(あま)小舟、ただ浦々の風にまかせて」
「我が力をすて敵の力をもって勝つ」
「身体をして心の欲するところに従順ならしむ」
と、全て自分を相手に対して相対的立場にいることが勝利の根底であることを説いています。
 このことに、ハッと気づいた人物が講道館柔道の創設者・嘉納治五郎です。彼は教育者としても第一人者で、学習院教授・教頭。旧制熊本第五高等学校(現:熊本大学)校長、第一高等学校(現:東京大学教養学部)校長などを歴任し、其の教育の一環として日本傳講道館柔道を創始し活動を広げてゆきました。
 柔道の「柔」という語には、「柔・剛などの相対する気が和合し、どちらにも偏りのない、安定、円満な状態」を意味しています。其の極意は、
「押さば引け、引かば押せ」
とあるように、
「敵の動きに先立つ気を読み、気のコントロールによって敵と力を合わせず、敵の気の外れの虚をついて制する」
というように、力の衝突のない滑らかな動きで相手との均衡を保ちながら、其のバランスの崩れる時をすかさず見抜いて技に及ぶのです。これが「柔の理」です。
 嘉納治五郎は、
「たとえば、立っているところを他人が後ろから抱きついたと仮定せよ。この時、厳格なる柔の理では逃れることは出来ぬ。相手の力に順応して動作する途(みち)はない。本当に抱きしめられる前ならば、体を低く下げて外す仕方もあるけれども、いったん抱きしめられた以上は、其の力に反抗して外すより別に仕方はない」
と言っています。要するに反対すれば力が足りないから負けるけれど、順応して退けば向こうの体が崩れて力が減ずるから勝てる。これが「柔能く剛を制す」の論理である。と結論付け、この後に、相手がその手を使ってきた時のフェールセーフの論理も展開しています。
 この道理を、柔道を志す人達は別にして、私たちはどのように実生活や経営に活用すれば良いのでしょうか。経営者ならば、その権力・権限で部下達を押さえるのではなく、彼ら自身が持つ能力を遺憾なく発揮できる状態を作る技術をここ(柔)から学ぶことが肝要なのです。
 催眠法を学ぶというのは、この相手の出方を具(つぶさ)に読み取り、それに対して適切な対処をすることが、この柔に通じるのです。

この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/