M&Uスクール

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今週の喝 第294号(2010.12.6〜2010.12.12) この世は全て催眠だ(36)〜ダブルバインドは、その用い方で毒にも薬にもなる。〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの?

この世は全て催眠だ(36
〜ダブルバインドは、その用い方で毒にも薬にもなる。〜

 近代催眠の創始者ミルトン・エリクソンは、弟子であるグレゴリー・ベイトソンダブルバインド理論を催眠による精神治療に効果的に用いました。ダブルバインド理論というと、今まで話してきた内容では、人を二進も三進も行かない状態に追いやり、行く先真っ暗の状態に追いやる“悪魔”の理論のように思いますが、何事もその利用法によっては、活用できる……毒にも薬にもなることを見事に証明しました。ここにも、人は自分の持つ観念に縛られて、ものの良し悪しを決めていたことを感じます。
 我々人間は、固定観念によって呪縛されやすいのです。一つ見方を変えたなら素晴らしい世界が開けるにもかかわらず、「もう駄目だ」と決めてしまうのです。
 エリクソンがダブルバインド理論を積極的に用いた方法を歯科医を例に話しましょう。我々が歯科医院を訪れる時の恐怖は、治療や抜歯の痛さの想像力によるものです。その結果、手遅れになり、最悪の状態を招くこともしばしばです。分かっていても、我々は抜歯を恐れ、尻込みをします。そして、治療に行かなければ悪化した状態の歯痛に苛まれ、歯科医に行けば、抜かれる恐怖に襲われるというダブルバインドです。
 こんな時歯科医は、抜歯しなければ治療が進まないと判断すると、患者に「抜歯は局部麻酔にしますか、それとも、上半身麻酔にしましょうか」などと患者に尋ねます。ここには、患者に対して「抜かないで治療する」という選択肢は全く入っていません。このように歯痛が進行している中で選択を迫られると、抜歯に同意してしまいます。心がその方向を向くと覚悟が決まり、治療は進むのです。

=拒否・抵抗する者に対する誘導法=
 このように、人の心を一方向に誘導することこそ“催眠”の極意なのです。我々が催眠というと、古典催眠の誘導状態を連想し、振り子や独特の誘導語でオカルティックな世界を連想し、あえて拒否反応を示しがちです。
 精神治療や心理療法に対しても、患者は催眠ということ自体に抵抗している場合がよくあります。そんな時、エリクソンは「今あなたは私の誘導によってトランス状態に入りたいですか、それとも自分のペースで入りたいですか」と尋ねたり、「深いトランス状態が良いですか。それとも浅いトランスにしますか」と暗示して、あたかも患者に選択する権利があるように誘導しました。
 人は一般的に命令されたり、隷属させられることを嫌います。鬱病に始まる精神的病に陥ったり、少年が非行に走ったり、またアルコール依存症や麻薬に手を出す人間のほとんどが、このような抑圧から自分を解放する手段として、周りが手を付けられないような状態に自分自身を誘導することで、その状態からの脱出策とします。つまり、逆に考えると、“不自由”からの脱出方として、精神病、不良、中毒を選んだと言っても良いでしょう。
 エリクソンが発見した、“命令的側面”(例えば「窓が開いているね」という言葉の裏には、「閉めて欲しい」「閉めろ」という命令が含まれている)などは、人間が相手に不自由を感じさせずに意志を伝え、その意志通りに動かそうとする無意識の話法です。人は、手っ取り早く相手に命令し、それが忠実に実行され、自分の意志通りに動くことが楽で一番とは考えるのですが、それこそ社会性のある人間であれば、そのようにされた時に自分が嫌な思いをすることも知っているのです。社会性とは、無意識に黄金律的見地(して欲しいことを施し、されて嫌なことはしないと言う観念)で言動を発する心の状態です。
 しかし、これが、軍隊や会社では一変します。
 軍隊はその職務上、咄嗟の変化に対応する能力が求められる故に、一個人(兵卒)の理解や意見を越えて集団行動する必要があります。その為に、有事対応を“命令や号令”で一斉に行う訓練をするかたわら、平時教育では、軍隊とは何のために存在し、何をするかと言うことを“訓令”によって無意識(潜在意識)に浸透させ、無駄のない命令系統を構築しています。
 しかし、このような専門的な知識や訓練を行わない一般の会社では、社長が給与権と人事権を盾に、“威嚇による強制”(荒っぽく言えば恐喝)や“代償行為”(労働や才能と金銭を交換)で社員に不自由を強要し、そこには社会的配慮(黄金律的見地)など微塵もないのが実情ではないでしょうか。
 いま、エリクソンが開発した近代催眠の技法を各会社が取り入れ、命令や強制などの閉塞感を取り去り、自分の意志で物事を遂行しているという感覚を社員やクライアントに与える技術を修得したならば、必ず、上下関係が滑らかに改善され、尊敬・憧憬・労い・信頼・信用といった人間関係に欠くべからざる潤滑油を手に入れることが出来るのです。それほど、エリクソン催眠は、催眠の域を出て、人間の願望実現や日常生活の円滑化に役立つのです。

この続きは、また来週……('-^*)/