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今週の喝 第289号(2010.11.1〜2010.11.7) この世は全て催眠だ(31)〜「負けてたまるか!」エリクソンの反動形成〜

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潜在意識ってどんなもの?

この世は全て催眠だ(31
〜「負けてたまるか!」エリクソンの反動形成〜

 幼少期に究めて重篤な身体障害1.ポリオ 2.色覚異常 3.失音楽症に悩まされたミルトン・ハイランド・エリクソンは、自力でポリオを克服したものの、後遺症による関節の変形、くり返す筋の脱力・激痛など生涯にわたって彼を苦しめました。しかし、彼は、感覚や運動を持ち前の観察眼の感性で一つ一つ再構成してゆくその過程で、細やかな動きや感覚の重要性を知り、痛みを和らげるために自己催眠を自ら創造し修得していきました。
 まさに、逆境がエリクソンの人格と業績を生み出したと言って良いでしょう。当の本人にしてみれば、そんなに生易しいことではない、文字通り“塗炭の苦しみ”であったはずですが、それに勇猛果敢に挑戦し続けなければ、自分が負けてしまいます。ここに、その人の持つ宿命と運命が微妙に絡み合い、素晴らしい金字塔が作られてゆくのです。
 18歳になったエリクソンは、ハル教授に出逢い、催眠を学んだのを切っ掛けに、さらに独自の観念で催眠研究を発展させてゆきます。彼の根本的思考は、「患者はもともと病気を克服する能力(自然治癒力)を持っており、治療者(医師など)の役割は、コミュニケーションを通して患者の自己治癒力を引き出すことである」というものです。
 彼の考えに従って、患者の自己治癒力を引き出すには、それぞれの患者のアイデンティティ(独自性・特殊性)を考慮する必要が生じます。そこで重要なことは、患者の能力、性格、職業、家族、生活史、欠点、治療に対する抵抗さえも活用して、患者に対し治療の必要性を認識させることです。

=その気にさせる名人=
 「治療に抵抗する患者などいない。柔軟性に欠けるセラピストがいるだけだ」この言葉は、如何に患者に接する側の良否が、治療を左右するかを言い表したエリクソンの言葉です。つまり、催眠誘導する側のボキャブラリーが大きく関係するのです。これは、演奏する側の情緒や技量が、聴く側の感情に大きな影響を与える音楽と同じで、リードする側の感性に全てが掛かっているのです。
 彼の技法は“ユーティライゼーション(Utilization)”と呼ばれ、利用できる者は何でも用いて、臨機応変・変幻自在に患者に即した適切なアプローチをするものです。従って、彼は技法の体系化を好まず、弟子達にもその目的(何のために)と精神をしっかり植え付け、それによって育まれた使命感のもとに、それぞれが独自性を生かした治療技法を編み出してゆくように指導しました。つまり、「真心をもって患者にあたれ」と言うことです。そうすれば、必ず患者の心が治癒に向かい、自己治癒力が活性するのです。彼の考え方の根本は、「催眠はコミュニケーションのひとつ」なのです。
 彼自身の催眠誘導は、催眠話法(後日お話しします)に、微妙な呼吸や抑揚を組み込み、普通の会話の中で自由自在に導引したのが特徴で、従来の催眠誘導(古典催眠)とは大きく異なります。
 このような素晴らしい催眠技法を身に付けたエリクソンですが、そこには病魔との戦いの後が色濃く残っています。彼の観察眼の鋭さは、このような苦しみの中から磨かれていったのです。そこから、人の言葉に存在する“ダブルテイク”、“トリプルテイク”を発見し、言葉の命令的側面や幼児の身体的発達過程への理解、そして何より、伝説的な観察力を自分のものにしました。
 ダブルテイク・トリプルテイクとは、ある言葉が二重・三重の解釈を許すことです。例えば「結婚」という言葉を聞いて、未婚の人には「憧れ」をもった希望の言葉に感じるでしょう。しかし、離婚の経験や伴侶の我がままなどに悩んだ人は、束の間の心の迷いをうんざりと感じるかも知れません。このように、その人独自のの過去の経験や未来への希望によって、色々な思いや解釈があることを言います。
 また、言葉の命令的側面とは、例えば「ドアが開いていますね」という言葉には、「ドアを閉めて下さい」という“命令”を含んでいます。
 また、幼児の身体的発達過程への理解というのは、その時期その時期に、色々なことを学習し、それを修得してゆく家庭に於ける、幼児独特の言葉や行動を理解せよと言うことです。
 例えば、私の知っている話で、幼稚園で遊び呆け給食をろくに食べずに家に帰ってきた園児が、お母さんに「今何時?」と尋ねました。「今4時よ」とお母さん、それから30分経って、再び「今何時?」…母「4時半よ」。また30分後に同じ事を子供が聞くので「5時よ。時計の見方を幼稚園で習っているでしょ」と、腹立たしげに答えました。その時の様子を見ていて、私はこの子が言っている「今何時?」は「お腹がすいたから、早くご飯作って」と言う意味であることに気付きました。そこで、持ってきたお土産のハニーポテトをあげると、美味しそうにパクパク食べ、その後、「今何時?」は言わなくなりました。

この続きは、また来週……('-^*)/