潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの?
この世は全て催眠だ(32)
〜「必要!」こそ気付きの母〜
ミルトン・ハイランド・エリクソンが幼少期に罹った究めて重篤な身体障害 1.ポリオ 2.色覚異常 3.失音楽症 は、まるでエリクソン自身に人間の情動を研究するための材料を神が与えたのではないかと思うくらい、彼自身の潜在意識を揺さぶりました。
ポリオ(小児麻痺)で四肢不自由になっても、赤ちゃんが成長する過程をしっかりと観察して、同じの行為を行うことによって、大学に行く頃には、しっかりと克服しました。そこには類い希なる“観察眼”を育み、その観察をもとに、不可能と思われる神経系のコントロール法を見いだしました。
それも、退屈しのぎに自分の家族を観察していて、ハッと気がついたと言います。「気付き」は、必要としていることが潜在意識に到達している時にのみ起こる、心の焦点です。色覚異常にしても失音楽症にしても、色や音が「美」として認識できない病気です。凡人であれば、自分の“不幸”を呪うだけにです。しかし、彼は自分に起こっている“不幸”を克服しようと、挑戦心を芽生えさせたのです。
健常者が「美しい」と感じることが、自分には感じられない…このことから、逆に冷静に何が「美しい」と感じる要素なのかを別の視点から観察したのです。
発見とは、このように異なった視点からモノを見ることによってなされることが往々にしてあります。現に、世紀の発見や発明は、その分野以外の人間が大発見しています。
近代細菌学の始祖と言われるパスツールは、生化学者であり医者ではありません。ライト兄弟も航空技師ではなくて自転車修理工ですし、アインシュタインは物理学者ではなくて数学者でした。
=リラックスこそ発明発見の基礎=
このように門外漢から見ると、観点の違った見方が出来るのと同時に、肩に力を入れない素直な心が正視眼をもたらすのです。つまり、リラックスこそ「気付き」の最大要因であるのです。
ポリオによって筋肉の萎縮を嫌と言うほど体験したエリクソンは、赤ん坊の柔らかい身のこなしを見て、リラックスの重要性を感じました。また、音楽の美しさを感じられないことで、その“美”を感じる人間を観察した結果、美しいと感じているときに、筋肉が弛緩し呼吸が深いことに気付いたのです。
リラックス状態を作るものが「音楽」であるならば、逆に、リラックスの状態を作り出せれば、音楽が持つ要素と同じ効力を作り出せると思いつき、言葉そのものの“抑揚”、その抑揚を作り出す根本要素の“呼吸”に意識的な注意を向けるようになりました。その結果、相手が「気持ち良い」状態になるエッセンス=催眠の独習することに成功したのです。
もし、エリクソンが音楽の美しさが理解できたなら、そこまでの観察眼は生まれなかったことでしょう。従って、彼のもう一つの障害である「色覚異常」も、なぜ絵画などの造形に人間が反応するのかを、冷静に観察することが出来、そこに人が芸術から受けるインパクトの内実を知ることが出来たのです。つまり、音楽や美術が我々人間を魅了するその要因を、科学分析できたのです。そしてそのエッセンスを再構築することで、人を一定の方向に誘導する“催眠”現象の「科学」を確立するに至ったのです。
こうして身に付けた催眠も、またそれを基にして自分自身で組み立てた精神医学も、全てハンディがあったからこそ見事に分析でき、自分独自の技法を次々に開発することとなったのです。このようにして身に付けた独自の技法を用いて、大学時代に延べ2000人以上に催眠誘導し、色々な実験を行いました。その結果、彼がたどり着いた一つの結論は「催眠はコミュニケーションの一つ」というものです。
彼は、自分自身が発見したダブル・テイク(1つの言葉に2つの意味や解釈がある)や言葉の命令的側面(Ex. 窓が開いているね=閉めて欲しい)、呼吸や言葉の抑揚に関する理解(内実を知る)など、その人間の行動や表情、言葉や姿勢の全てを催眠誘導に持ち込んで、非常に巧みに(相手に気付かれないように)行いました。その結果、普通の会話と催眠誘導の境界が曖昧になり、普通の会話の中で自由に誘導する見事なものでした。
これは、従来の古典催眠で用いる一点集中凝視法や振り子法など「今から催眠に誘導しますよ」と言うことから生まれる被験者の不安を取り去ることになり、クライアントはとてもリラックスした状態で誘導されたため、現代催眠、またはエリクソン催眠と呼んで区別されています。
この続きは、また来週……('-^*)/