M&Uスクール

潜在意識の有効活用を教える学校”M&Uスクール”のサイト

今週の喝 第190号(2008.12.8〜2008.12.14) 〜偉人に学ぶ……楠木正成(12)〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの?

偉人に学ぶ……楠木正成(12)

 青葉茂れる桜井の     里のわたりの夕まぐれ
 木(こ)の下かげに駒とめて  世の行く末をつくづくと
 しのぶ鎧の袖の上(え)に   散るは涙かはた露か

 正成涙を打ち払い     我が子正行(まさつら)よび寄せて
 父は兵庫におもむかん   かなたの浦にて討死せん
 汝はここまで来つれども  とくとく帰れふるさとへ

 私は、この明治32年に作られた「大楠公」(桜井の訣別(わかれ))という歌が大好きです。楠木正成と正行父子の無念の情、そして逍遙と自分の運命に従おうとする武士道精神が歌詞の至る所に表れています。
 太平記によれば、当時11歳の正行(異説有り)が、父の供をして自分も尊氏と戦おうとやって来ます。おりしも梅雨の時期。しのつく五月雨(さみだれ)の中、年端もいかぬ正行の心意気に、思わず涙を見せる正成の心の内が1番の歌詞に見事に謳われています。
 しかし、正成は正行を「ここまで来てくれたんは嬉しいけど、おまえは河内へ帰れ」と諭します。それは、後醍醐天皇のために一家をあげて玉砕することに、空しさを感じた証しです。アホな上司を持った部下の心境です。しかし、自分の名誉だけは守らなければならないという男の意地が2番の歌詞に表れています。
 この詞を作詞した落合直文は、戊辰(ぼしん)戦争に敗れた仙台藩の出です。そこに無念なる己の心情と正成をオーバーラップさせたのでしょう。そして、この素晴らしい詞に、海軍軍楽隊の奥山朝恭(おくやまともやす)が、心に染み入るメロディーを付けました。長調であるにもかかわらず、短調をしのぐ哀愁のある歌だと私は思います。

 

=父子の情は永遠に=
 「正行よ、今からわしの言うことをようハラで聞いとけ。この世でもうお前と会うことはない。わしが討ち死にしたら、天下は足利のものとなることは分かっとる。そやけど、生きていてもわずかな一生や。そやのに助かろ思て幸福なんかしたらあかんで。
 おまえは、金剛山にこもって戦うんや。これがわしに対する一番の親孝行や」
お供をしたいという正行を無理矢理河内に追い返し、徹底抗戦することで楠木家の意地を見せるように言います。また、正成は朝廷のあまりにも急な出陣命令であったために、家の者達に事後を託さなければならなかったのです。そして楠木家を温存することも考えなければならなかったのです。
 足利が勝つだろうが、後醍醐も容易く屈しないだろう。そこに子孫達の立ちゆく余地があるに違いないと、正成は現実的な計算と見通しをしたのでしょう。その証しに、かなりの兵を割いて、正行につけてやりました。来るべき兵庫の戦いには、そんなに人数は必要ないと、とことん正行に言い含め、正成は西を目指し、息子は南に別れて行きます。
 息子・正行がその後歴史に姿を見せるのは、桜井の訣別から11年後の1347年、22歳の時です。父の遺言通り、後醍醐天皇が京を捨て南朝をたてたところで活躍します。紀伊や河内、八尾を攻め、藤井寺の足利軍を夜襲して快勝、そこへ駆けつけた援軍も阿倍野の原で打ち破ります。そして、潰走する足利勢が浪速の渡辺橋から落ちて溺れているのを、正行は敵であるにもかかわらず救い上げました。まさに、正成の再来と皆は賞賛し、その名将ぶりも手伝って、吉野の山に押し込められていた後醍醐達南朝方は、息を吹き返します。
 そして12月、足利方は8万の大軍を河内に差し向け、南朝への大攻勢を掛けてきます。その戦に正行は「撃破して京都を回復せよ」と決戦を命じられます。京都奪回は公卿達の宿願であります。
 この命令を聞いた正行は急ぎ吉野へ赴き、この決戦の無謀さを切々と解きますが、後醍醐のあとを継いだ後村上天皇は、
 「正行、お父上の正成を見習いなはれ。臆病風に吹かれはったんか」
と、手厳しく正行の作戦を退けました。父正成と同じ運命を辿っています。
 正行は、清く死ぬことを覚悟し、一族郎党143人の名を如意輪堂の板壁に書き連ね、その最後に和歌をしたためました。
 返らじと 兼ねて思へば梓弓(あずさゆみ)
 なき数にいる 名をぞとどむる
正行は恨みを朝廷に含んで大敵に向かって死を決した様は、兵庫へ赴く正成の心情とそっくりです。そして、わずかの手勢を率いて、河内平野を北へ進軍し、6万の足利の本隊めがけて、突撃に次ぐ突撃を敢行し、6時間の戦闘で全身に深手を負い、疲れ果てて、ついに弟の正時と差し違えて戦死します。今の大阪府四条畷(しじようなわて)での戦いでした。

(教訓)
 親が立派な背中を見せたら、
 子も立派な生き様をするもんでんなあ……。
 親は子の鏡……そういえば
    ミラー細胞の発見もありましたなあ。


この続きは、また来週……('-^*)/