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今週の喝 第154号(2008.3.31〜2008.4.6)〜偉人に学ぶ……白隠禅師(6)〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの?

偉人に学ぶ……白隠禅師(6)

 自分自身が悟りの境地を得、その悟りを苦しむ民衆のために役立てようと、果敢に挑戦する白隠は、自分の悟りが民衆に理解されず、生かされないのではないかという不安に駆られ、重度のノイローゼに肺結核を併発し、その上、今まで自分がしてきた修行や体得した智慧によって治そうともがきます。するとますます、心身共に乱れ病状は悪化するばかりです。白隠は、禅の修行者が陥りやすい「禅病」に罹ったのです。
 禅病は、言わば修行そのものが病因となり、病の地獄が生まれてくる自己矛盾が引き起こす地獄です。
 そんな死の淵の白隠に、京都白川の山中に白幽子(はくゆうし)という仙人がいて、病気治癒の方法を教えてくれるという朗報がもたらされ、二六歳の正月に最後の力を振り絞って京へ向かいます。

 話は変わりますが、室町から南北朝時代に活躍した夢窓(むそう)国師は、僧侶が出家の身でありながら、病に苦しみ無様(ぶざま)な死を遂げたという現実を目にし、今やっている修行では悟りの域に入れないと考えて旅に出ました。
 白隠も自分の身がこのように苦の極致にいたって、先人たちのことが脳裏を行き来しながらの旅でした。そんな話の中に、ある老僧に重い腫れものができ、背中が腐る病気に罹り、その悪臭や無惨な姿に、誰も近づかなくなり、苦しみ抜いた中から悟りを得ます。「この度の病は、私にとって誠に尊い師匠であった」と後に語ったこの老僧は、健康であった時の悟りや見識は何の役にも立たず、ただ妄想と苦痛を増幅させただけということに気付き、全ての原因が自分から発したもので、とうてい助からない命だからこそ、色々と思いめぐらした結果、苦悩が勝つか、工夫が勝つか心の限りを尽くして戦おうと決心したと告白しました。

=素晴らしき自然治癒力=
 人がこのように心と身体を一つにした時、不思議に病が癒えたという事例を、多く耳にします。その回復の正体は「自然治癒力」が活性したことにあります。そもそも人間は、その体内に自分の心身を正常な状態にキープするための制御装置が備わっているのです。余りにも当たり前に考えているこの「自然治癒力」ですが、本当のところは、今の最先端の医学を持ってしても、何故そのような作用が働くのか、また、どうすれば良く作用するのかなど、分からないことが多いのです。ここに、白隠自身が大悟する秘密が隠されていようとは、彼自身も気がつかなかったのです。
 さて、白幽子のもとを訪れた白隠は、丁寧に教えを請い独自の養生法を伝授されます。後に白隠が「夜船閑話(やせんかんな)」という本にまとめたので後日お話ししますが、病に対して心身一如の境地を得るところまで、自分を昇華させるのです。このように書くと難しそうですが、誰にでも出来るように書いてあります。ただ、毎日毎日欠かさず実行するという人間の一番不得手な「継続力」が必要なのです。逆に考えると、死に瀕した病に罹ったからこそ、継続力は身につくのではないかと私は考えます。全てを捨て去り、ただ一点、自分の<命>と向き合うことなど、健康な時には想像すら出来ません。この病がもたらした集中力を毎日毎日持続する心のエネルギーは、このような苦悩から生まれるのです。それこそ「自然治癒」の根源的パワーなのだと思います。
 白隠の「夜船閑話」には、禅の修行をしていて行き詰まったなら「止めて、先ず熟睡せよ」とあるから面白いですね。頭をスッキリさせて、それから取り組めと言っているのですが、凡人には執着があり、仕事をおっぽり出して、体調を整える事に専念することは至難の業ではないでしょうか。そこには、放り出した事で起こるかも知れない不安や、仕事を失いたくないという欲望がムラムラと湧いてくるのです。この放り出すことも、人生に於いては修行の一つなのです。従って、白隠も彼(か)の老僧の悟りの如く、自分の患った病に感謝すらしています。
 さて、この白幽子なる仙人については、多くの研究家が架空の人物であるとしています。私は、中国の老子の如く、中国の智慧の集大成として、そして、その象徴的人物を「老子」と名付けたように、白隠の心の中にしっかりと智慧として根付いた技や術を、「白幽子の教え」として、謙虚に表現したのかも知れません。(もちろん実在だという説もいまだ有力です。) 白隠の性質から考えると、きっと、山ほど書を読み、多くの人を訪ね、死にもの狂いで研究したことでしょう。そして、試行錯誤の末、到達した境地と治療法であったとしても、自分の自慢の種にはしなかったと考えれば、より白隠禅師の偉大さが身近に感じられます。

       地獄で仏、人間万事塞翁が馬


この続きはまた来週……('-^*)/