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今週の喝 第151号(2008.3.10〜2008.3.16)〜偉人に学ぶ……白隠禅師(3)〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの?

偉人に学ぶ……白隠禅師(3)

 お坊さんには、大きく二つの仕事があると私は思います。一つは、自分自身が修行の上に悟りを開くこと。もう一つは、苦しみ迷う一般衆生を救済することです。
 長沢岩二郎(白隠)は、他人事ではなく、幼少時代に味わった「自分が地獄へ落ちる」という恐怖から脱しようと思い、一人の弱い人間として、どの様に苦悩を乗り越え、幸せになるかという営みを必死で続けた人物です。
 従って、悟りを開いた白隠には、弱者救済のためのノウハウを同時に併せ持った素晴らしい感性が宿ったのです。だから今日、禅・中興の祖の名をほしいままにしているのだと思います。
 宗教、哲学、思想など色々と心の在り方について説く分野はありますが、これらは全て、人が苦痛から逃れて幸福になれるようにというところから出発していることには変わりありません。しかし、生老病死の苦、つまり人間であることから生まれる苦悩や、その宿命から逃れるということは、簡単に見えてこれほど難しいことはありません。白隠はその答えを問い続けた人でした。

 十二歳の時、読経をしながら熱した火箸を腿に当て、七転八倒した岩二郎は、我流ではどうにもならない。出家して修行に励むほか無いと決心を固めます。両親は思いとどまらせようと必死になりましたが、適わず、ついに十五歳の時に近所の松蔭寺へ入って僧となり、単嶺(たんれい)和尚のもとで慧鶴(えかく)と名乗ります。
 岩二郎の出家は、苦を逃れたいという根本的欲求、深い感情から発していました。それが後に、白隠をして「形骸化した仏教を、もう一度生きた人間の生身の苦しみから脱却するものとして考え直そうとし、その在り方を辿り直して、釈迦の生涯を自分自身に置き換えて跡を追う、彼自身の独自性となった」のだと思います。

=休心房(きゆうしんぼう)の不思議な予言=
 岩二郎が七歳の頃、家の裏の西念寺に休心房という念仏の行者がいて、父が時々家に招き接待をしていました。休心房は、そのたびにまだ幼い岩二郎を自分の傍に坐らせて、決して下の席には坐らせませんでした。それだけの敬意を払って、いつも岩二郎の背中をなでながらこう言いました。
 「あなたには奇骨(きこつ)(特別な相)がある。必ず世に福をもたらすであろう」
 「雪山六年、松林九年、汝よく護持せよ」
「雪山六年」というのは、釈迦がヒマラヤの山中で六年間修行したことを指し、「松林九年」とは達磨(だるま)大師が中国の少林寺で、壁に向かって九年間、誰にも会わず坐禅を続けたことを言います。この精神をよく自分のものとして受け継げということなのです。つまりは、原点に戻れということを示唆したのだと私は考えます。
 どんな素晴らしい素養があっても、我々人間は周囲の環境・体制・人間などに惑わされがちです。そして、一刻も早くこの惑いを払拭した者が、己の迷いから脱却して、周囲に正しき道を示して行きます。人は、凡人六原則の中にあるように「楽と得がしたい」という合理性(横着性)をもっているので、どうしても、色々な手法を見つけ簡単に事を運ぼうとしたり、一挙両得といった都合に走ってしまいがちです。そのような人間本来の性質も手伝って、釈迦の教えも多くの宗派に分かれていったのです。各宗派は釈迦の言葉をそれぞれの解釈で人々に伝えるため、ますます民衆は固定化され、誤った方向に導かれがちです。そしてそこには、矛盾が生じ、それを正当化するための詭弁がまかり通り、理解を求めたにもかかわらず、ますます混乱してゆくのです。
 そこで、休心房は「原点に戻れ」……すなわち、釈迦の心に戻れ、達磨大師を忘れるなと、七歳の少年の潜在意識に、乱れた宗教の在り方を教え込んだのです。
 この休心房という僧は、非常に伝説的でオカルト的な超能力を発揮したと文献には残っています。
 富士の裾野の黄檗(おうばく)宗円城寺に住まうこと百年、そして、小田原の紹太寺に登って鉄牛和尚のもとに参禅し、そこで空中浮遊の業を見せたために、追い出されたという噂があったといいます。そして、伊豆三島あたりで尺八を吹き歩いて、あたかも狂僧のようであったというのです。
 この休心房という僧は、幼い岩二郎に三つの秘法を教え、そうすることによって、福寿を増すであろうと説きました。それは、
 一、)食事の汁の余りは湯を加えて全て飲め。
 二、)しゃがんで小便をせよ。
 三、)北方に向かって足を投げ出したり、便をしてはならぬ。
 岩二郎は、死ぬまでこれを守り、病気の時でもその戒めを破らなかったといいます。これに何の意味があるのかは、私には分かりませんが、とにかく理屈よりも、実践し続ける気概を幼い頃より心に深く刻み込んだことだけは確かです。

  継続は力なり   住岡夜晃(すみおかやこう)


この続きはまた来週……('-^*)/