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今週の喝 第136号(2007.11.26~2007.12.2)〜偉人に学ぶ……山岡鉄舟(3)〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの?

偉人に学ぶ……山岡鉄舟(3)

 山岡鉄舟が江戸無血開城に向けての話し合いをするため、駿府に本営を構える西郷隆盛のもとに馳せ参じた時、彼は全てをなげうって敵中突破をしています。官軍の先鋒隊はすでに品川あたりまで来ており、そのまっただ中を鉄舟は
「朝敵徳川慶喜の家来、山岡鉄太郎、大総督府へまかり通る」
と大声を上げ、堂々と進むと、こそに居合わせた百人ほどの敵兵も唖然として誰も手出しをしなかったと言います。
 こんな彼の胆力(度胸)は、剣・禅・書から明鏡止水の境地を得た結果、培われたものです。そして、いざ西郷との面会の席でも、徳川慶喜の処遇について中々鉄舟の要望を聞き入れない西郷に対して、「先生と私の立場を代えてみて下さい」と、黄金律的見地を手段として説得し、江戸無血開城と慶喜の身柄安泰の約束を取り付けております。
 黄金律とは“自分のして欲しいことを、相手にもする。また、されて嫌なことは、相手に対してもしない”という、相手の立場になって物事を見る相対眼的思考法で、人間関係を円滑にする素晴らしいエネルギーを秘めています。
 これも<剣>という実際に死と隣り合わせの武道から学び取った鉄舟の人生訓なのです。剣は相手の隙を突き、心の弛みに切り込みます。その上、自分の心に内在する恐怖との戦いでもあり、勇気を鼓舞するための確証を得る手段でもあるのです。
 全てが表裏一体……生命をかけた生き様が、全てを成就させるのです。

=明鏡のごとき心=
 勝海舟をして「山岡は明鏡の如く一点の私(わたくし)をもたなかったよ。だから物事に当たって、即決して毫(ごう)(少し)も誤らない。しかも無口であったがよく人をして自らを反省させたよ」と鉄舟を評しています。明鏡とは物事の隅々まで映し出し、いささかの曇りもない鏡面を持った鏡のことです。
 人間は、人にその動向を鏡に映った如く真似されるようになると、本物の域に達したと言って良いでしょう。そして、本物は本物の素養を呼び寄せ、本物の素養のあるものだけが本物へと成長してゆきます。そんな意味でも、山岡鉄舟の周りには本物の素養を備えた弟子達が集まってきました。いわゆる「類が友を呼ぶ=類項作用」がおきたのです。彼ら弟子達の心に、鉄舟の行い全てが清廉で美しい姿に映り、その生き様を真似るようになりました。
 同時代を生きたアメリカの教育者エマーソンが、
「たった一人の賢人が仲間の中に入ればよい。そうすれば全員が賢くなる。伝染力というものはかくも急速である」
というように、人は楽と得を求める生き物であるために、<朱に交われば赤くなる>のが通例ですが、そこに生き様の美しさがあれば、周りの人間をもの凄い勢いで巻き込んでゆくパワーを発揮します。このエネルギーこそ明鏡の如き心から出てくる巻き込みのパワー(トルネード・パワー)なのです。
 相手の心に「格好良さ」を映し出し、目標に向かってしっかりとした目的意識(何のためにやるかという心)を持って突き進む気構えや行為は、全てが己自身の運命に反映されます。やがて、人のためにやった行為・行動は、自分自身にフィードバックされ、それがその人間の運命を司るのです。従って「情けは人のためならず」のことわざ通り、誰かのために良いことをするのは、結果的には自分の運勢を良くすることに繋がります。西郷隆盛も「人を相手にせず、天を相手にせよ」と喝破するように、相手がどう思うとか、感謝されるかなどの小さい評価は関係なくなります。
 山岡鉄舟の晩年は胃ガンに苛まれながらも、素晴らしい弟子達に囲まれて過ごしました。このことからも分かるように、明鏡の如き心でその生涯を歩むことは、その名を後世に残し、多大な伝染力(影響力)でもって、世を正してゆくための礎(いしずえ)となるのです。


続きはまた来週……!