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今週の喝 第839号(2021.5.17~5.23)この世は全て催眠だ(580)〜「さぁ、行くぞ!」…師匠の力強い声に背中を押され〜

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潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(580
「さぁ、行くぞ!」…師匠の力強い声に背中を押され

 1500人収容の尼崎市文化会館(現:アルカイックホール)にたった50人の観客の中で行われたコンサート。曲目は、
 ●モーツァルト作曲「ディベルティメント第1番二長調K136」
 ●シュターミッツ作曲「フルート協奏曲ト長調作品29」
 ●チャイコフスキー作曲「弦楽セレナーデハ長調作品48」
の3曲です。
 こんな寂しい人数であったにもかかわらず、演奏の熱気は今も私自身の肌にシッカリとその感覚は残っています。一曲目のディベルティメントとは「楽しく軽快で愉快な曲」と言う意味で、モーツァルトの性質をそのまま表した4楽章形式の楽曲です。16歳の若さで書いた作品です。
 この曲で幕が開いたコンサート、観客も人数の少なさに不安を隠せない表情であったのですが、第1楽章のAllegroのテーマが始まると、すぐに演奏者と観客の心が一つになって、みんな興奮しているのが舞台の袖で出番を待つ私にも、肌を通して伝わってきました。
 そして、いよいよ私の出番。宇宿先生は、私の右肩に手を置いて、
 「今日も私にいい君の笛の音色を聞かせてくれれば良いんだ」
と、“お前は私の同志だ”と言わんばかりの眼差しでダイアドを組んで語りかけて下さいます。そして、
 「さぁ、行くぞ!」
と、私の背中を舞台の方向に押し出して、その後を全身全霊を慈愛の面持ちで眺めて下さっているのを背中に感じつつ、舞台正面にシッカリとした足取りで向かいました。そして、師匠が指揮台に立ち私はその下手に陣取った感覚を今でも忘れることが出来ません。以前我が師は、
 「私ほど緻密に音符を解釈している指揮者はいないから、私だけを意識すれば必ず良い演奏になる!」
と、自信たっぷりに言った声がそのまま聞こえてきました。

 

★★コンサートの「感動と歓び」こそ生命力の賜物★★
 今振り返っても、48年前のその時の感覚を鮮明に覚えています。舞台電球の色、残響、そして独特の匂い、先生の慈愛に満ちた眼、そしてそこに立っている感覚……その全てを、身体全体が覚えているのです。生意気なようですが、全く上気する(上がる)ような感覚は無く、恐ろしいほど落ち着いているのです。それは、言わば“鬼才”といわれる我が師が私に“お墨付き”を渡して下さったことで、私自身にミューズ(音楽)の神さまが宿り、マンハイム楽派の巨匠カール・シュターミッツの精霊が私を包み込んでくれている感覚です。
 そして、師匠と眼が合い、無言の言葉で「いくぞ!」の目配せを感じた次の瞬間、ト長調の力強い主和音がフォルテッシモで会場になり響き、第1テーマ、第2テーマがオーケストラで演奏され、いよいよ、フルートの出番です。
 その感覚は、私の人生の中で自分のこれからの姿勢を固める最大の瞬間だったと思います。舞台にシッカリと足が着き、心の底から喜びと感動が軽快な16分音符と共に湧き上がってきます。そして、シュターミッツに完璧に集中出来ているにもかかわらず、それまでの音楽に向かう姿勢に於けるさまざまな確執が甦っては、自信と共に消えてゆくのです。
 そして、1楽章のカデンツァ(フルートのみで自由に演奏する箇所)では、今迄9年間ひたすら笛の練習をしてきた自分自身を寿ぐように、ミューズの女神が真隣(まとなり)で微笑んでいます。そして、カデンツァのエンディングのトリルで再び師匠と眼が合い、にこやかにOK signをくれました。
 次は緩やかなAndanteの第2楽章。思いっきり心を込めて歌い、会場中が私の笛に酔いしれているのを感じました。その余韻も覚めやらぬ間に第3楽章のAllegroロンドです。中間部に3拍子の短いメヌエットを挟んで、曲はいよいよ終盤へと盛り上がってゆきます。当時の演奏を現在(いま)聴くと、「若いって素晴らしい!」の一言です。エネルギッシュな演奏は、曲の最後まで萎えることはなく、見事なエンディングです。
 気付いたときには、わずか50人の拍手とは思えないほど盛大な喝采を浴びていました。そして、我が師は優しく私を指揮台の上から、抱きしめて下さいました。その興奮時、どんな困難が来ようとも、私はこの感動を忘れないことで、全ての困難や危険を乗り越えることが出来るという信念がホツホツとお腹の底からわき上がってくるのを実感しました。これこそ、「感動と歓び」が一つになったミューズ(女神)の霊力の賜物なのです。

 

     この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/