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今週の喝 第263号(2010.5.3〜2010.5.9) この世は全て催眠だ(5)〜メスメルの催眠法は本物か、偽物か?〜

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この世は全て催眠だ(5
〜メスメルの催眠法は本物か、偽物か?〜

 メスメルリズム……明治時代に催眠法が日本にもたらされたとき、このような呼び方で呼ばれていたように、フランツ・アントン・メスメルの動物磁気説による催眠治療は、相当な効果を発揮していました。しかし、その効果は、患者が動物磁気の存在を信じているときだけ現れ、それ以外では現れないということが明らかになりました。
 メスメルの治療法が大評判になるにつれ、パリの医学界では賛否両論の嵐が巻き起こり、多くの医師達が議論を戦わせました。そしてその騒動は、ついにフランス国王ルイ16世まで巻き込んで、科学的調査をするための委員会が組織されたのです。そして、その委員長にはイギリスから独立を勝ち取ったばかりのアメリカ人、ベンジャミン・フランクリンが任命されたのです。彼が委員長に任命されたのは、凧によって雷の研究をした電気と磁気のオーソリティーであること、そして、彼がアメリカ合衆国全権大使としてパリに滞在していたからです。
 メスメルの治療法は、患者に目隠しをして彼が磁気を帯びさせたという杖で患者の身体に触れ、磁気流体の均衡をとることで健康な状態にするというものでした。その時、「磁気を帯びた杖を使う」と宣言してから触れると、たとえそれが磁気を帯びさせていない普通のどんな杖でも患者は反応しました。しかし、「ただの杖である」と言うと、たとえ本物の杖を使っていても患者は全く反応しませんでした。
 委員会の結論は「動物磁気なるものの存在を裏付ける証拠は一つもない。治療を受けた患者に観察された効果は、想像上の興奮によるものである」とメスメリズムを公式に否定しました。

=メスメルの功績は……=
 この発表の結果、メスメルはパリを追われ、故郷ウィーンに戻り亡き妻の残した財産を整理した後、亡命の旅に出て、最後の20年間の行動はほとんど知られていません。そして1815年、スイスに近いドイツの街メールスブルクで亡くなりました。
 今でも、メスメルについての評価は、とんでもないペテン師であったという説と、理論は間違っていたけれども真面目な医師であったという説とがあり、後者が有力になっています。
 20世紀に入って、メスメリズムに近代科学の光が当てられ、再び検証した結果、その本質は「自己暗示」と「催眠現象」そのものであり、メスメル自身それとは気付かず、「プラシーボ効果」と「催眠療法」を行っていたことが明らかになりました。
 プラシーボ効果とは暗示効果の一つで、白衣を着た医師からもらう薬と背広の医師からもらう薬では、その薬効が違うという現象に代表される効果です。つまり、暗示の状態によって効果が変わる現象です。製薬会社が新薬を開発するとき、その薬効が薬本来のものであるのか、それともプラシーボ効果によるものかを見極めるために、それは膨大な実験を繰り返します。その実験に対する費用はバカにならず、その為に開発費が膨らんでしまうのも事実です。
 現在、プラシーボ効果や催眠療法は近代科学によってその効能が証明され、精神神経医学分野を始め、さまざまな医療分野で日常的に用いられています。
 また、民間・大衆の間では、メスメルの動物磁気説は全く廃れることなく生き続けます。一番身近にあるのが、気功術や磁気リング、水晶ネックレス念珠など、本質的には同じ原理の民間療法が次々と流行を繰り返しています。
 あなたは、メスメリズムについてどのような判定を下しますか。
 人は、その事を信じるが故に病気などが治癒するという現象は、信じるが故に成功に至るという哲学的見地の確立にも影響を与えています。
 後年、イギリスの外科医ジェームス・ブレイドは、メスメルの動物磁気説は人をある一点に凝視させることによって引き起こされていると解明し「神経睡眠学」という本を著しました。今では催眠誘導の手法として一点集中凝視法はトランス状態に導く当たり前の方法です。トランス状態(Trance)とは、恍惚状態、つまり、うっとりとする様で、ヒーリング効果(Effect of healing)をもたらします。ヒーリングとは、癒す、治す、回復するという意味です。
 ブレイドは、「メスメルリズムによって引き起こされるトランス状態は、神経が激しく疲れ消耗したときに現出する」と考えました。そのとき、メスメリズム(=催眠術)を、ギリシャの眠りの女神ヒュプノスに因み、ヒプノティズム(Hypnotism)と命名し、現在も催眠術はこの名で呼ばれています。彼の理論は今では誤ったものですが、催眠を科学的な用語を用いて、生理学的、解剖学的な基礎の上に立たせようとしたことは、大きな功績です。

この続きは、また来週……('-^*)/