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今週の喝 第755号(2019.10.07~10.13)この世は全て催眠だ(496)〜思い出の「幸せなら手をたたこう」〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(496

思い出の「幸せなら手をたたこう」

 私が高校二年生の秋、突然、NHKの中学生向け番組「明日は君たちのもの」(総合テレビ土曜午後6時放送)で、今津中学校吹奏楽部が、2年間全日本吹奏楽コンクールで二位に甘んじる苦汁を飲んでいた時、指導者・得津武史先生が再起を目指して立ち上がったという噂を聞きつけ、半年間の長きにわたってドキュメンタリー取材を受けました。
 そのサブタイトルは、「高鳴れブラス!」
 そして、私も次期レギュラーになる1年生の指導をしていた関係で、取材を受けることとなりました。録画の当日は、何の打ち合わせもなく静かにカメラマンとマイク係、そしてディレクターの3名が、私達が練習する音楽室に気が付かないうちに入ってきて、2時間に渡って、至る所を撮影していました。
 私は、当時から一旦音楽など自分の世界に没頭すると、周囲などまるで眼中になくなるアスペルガー的体質(これも、得津先生の指導のたまもの)なので、全く気が散ることもなく、ガンガン一年生に自分が思っている音楽のニュアンスを伝えておりました。最近、その時のビデオを振り返って観たのですが、本当に自然な形でいがぐり頭・詰め襟学生服の私が、本当に幼い表情の一年生にリズムやテンポ、メロディーの表現方法を超大阪弁の得津先生もどきで指導しておりました。練習曲目は、その年の選抜高校野球大会の入場行進曲「幸せなら手をたたこう」です。
 そして、練習が終わったときには、テレビクルーの三名の姿はありませんでした。この時のビデオで過去の自分を観ると、何か得体の知れないフラストレーションから、どうして良いのかも分からず、また、大学受験を控え、周囲がその体制に入っている不安も手伝って、只々、がむしゃらに音楽にのめり込んでいる心の揺れが感じ取れます。そして、その時の心情を現在(いま)(67歳)振り返ってみると、あらゆる心の葛藤や、周囲の人達との意見の違いによる確執、そして、現状(勉強しなくてはならないのに身が入らない故、成績がじり貧で落ちてくること)から来るわけの分からない恐怖感に翻弄されながら、それを払拭するように前を向こうとしている様子が窺えます。

 

★★得津先生、宙に舞う!★★

 結論から申しますと、その年の11月17日、京都会館(現:ロームシアター京都)第一ホールで行われた全日本吹奏楽コンクールは全国選りすぐりの10校の中で、出場順位が1番という非常に緊張した状態で行われました。そして、午後一番に審査結果の発表です。もちろん、NHKのテレビクルーも、当日の演奏はもちろん、満を持して成績発表の瞬間を映像に収めようと隠れて待ち構えています。そして、司会者が
 「それでは、コンクールの結果を発表致します。全日本吹奏楽コンクール中学の部第一位は、関西代表兵庫県……」
と言った瞬間、全会場から大歓声が湧き上がり、それ以後の西宮市立今津中学校吹奏楽部というアナウンスは全く聞こえませんでした。得津先生も私も、2年前の仙台でのあの真っ白になった脳裏と同じ感覚が蘇り、全く声も出ません。しかし、宮城県民会館とは雲泥の差の結果です。
 現在の吹奏楽コンクールのように“金賞”が数校あるのと違い、あの頃は、一位はたった一校です。後に、音楽のような嗜好性のある芸術がスポーツ競技のようにハッキリと点数を付けられるのかどうかという議論が起こり、やがて今の形に定着したのですが、そんな金賞数校の中でも、表(おもて)だって発表されませんが、やはり1位、2位の順位は厳然とあります。それが時々漏れ聞こえた事態も起きたようで、益々、吹奏楽連盟は閉鎖的になってゆくのですが、あの当時は本当に明快でした。
 そして、その結果は2位は東京都豊島区立第十中学で自由曲はイタリアの作曲家レスピーギ作曲「ローマの松より~アッピア街道の松」、3位は島根県出雲市立第一中学校で、自由曲は私のもっとも好きな曲、ドヴォルザーク作曲交響曲第9番「新世界より~第4楽章」でした。これらの音源は今もCBS SONYから吹奏楽の名演としてCDが発売されております。
 今聞き比べても、何処の学校も素晴らしい演奏ですが、我が校の演奏はダントツにその演奏技術、音楽解釈、意気込み、迫力etc.他校より秀でております。
 そして、気を取り直した私と得津先生は、観客席の大歓声の中、うれし涙で顔を見合わせたのを今も明快に覚えております。今も平安神宮の前にある京都会館前の広場に佇むと、あの日、みんなで得津先生を胴上げしたことを思い出します。その2年前、仙台近郊の秋保温泉の旅館で、私たち生徒に、
 「済まんかった。ワシが全部悪いんや。お前等はわしの言うた通りにシッカリと演奏した。」
と深々とお辞儀をした先生が、今ここ京都で、何度も何度も宙を舞っています。そして、生徒、父兄、先輩達のまえで、
 「あぁしんどかった。お前等ホンマに頑張ったのぅ!ありがとう。。」
と又深々とみんなにお辞儀をしている先生がいます。
 これこそ、人生の醍醐味……子供時代と決別した私は、この歓びのために人間は生きるのではないかと思いながら宙に舞う先生を涙ながらに見ておりました。そして、この模様は全て「明日は君たちのもの~高鳴れブラス」に収録され、12月初旬に放映されました。

 

この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/