潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの？
この世は全て催眠だ（６３３）
レコードは勝手に売れない！
昭和54年1月29日発売になった「おもいで酒」ですが、私の予想に反してB面の憂き目での出発でした。人とは面白い生き物です。何の因果もない世界であるにもかかわらず、B面になったと言うマイナス面だけが心に引っかかり、それこそ心がB面になってしまいました。
そんな時、私の音楽活動に始終反対ばかりしていた我が父・郁郎がB面のレコード500枚を自費で買い、印刷屋で購買宣伝のための名刺を1000枚刷って、ポータブル・レコードプレイヤーを携えて、自分が出席する会合に重い荷物であるにもかかかわらず、宴会になるとそれを掛けてくれていたのです。
本来なら常に威厳を大切にする我が父なら「B面のレコードなど格好悪くて……」と思うのでしょうが、私が見る限り、AもBも関係なく情熱を込め、その場に集まった皆さんに聞いて貰っているのです。
今も深く印象に残っているのは、兵庫県畳組合の新年会が有馬温泉の兵衛向陽閣で行われた時、「お前もついて来い！」と連れて行ってくれました。その時の、父の熱心なセールスには、熱いものがこみ上げてきました。宴会終了後、カラオケルームにみんな足を運び、そこで皆さんが「おもいで酒」をリクエストしてくれるのですが、B面の、しかも発売し立ての楽曲にカラオケなどある訳がありません。この時の悔しさは一入(ひとしお)でした。
「何とかこれをA面に変えなければ……！」
と焦ってみても、それを決定するのはレコード会社やプロダクションの采配によって成されます。帰りの車の中で、我が父は
「カラオケにないのは、ちょっと悔しかったな。この曲が売れたらABひっくりかえるんとちゃうか？毎日じっとしててもレコードは売れへんで。後は自分で考えるんやな」。
★★有線のお姉さんに教えて貰った賄賂★★
この一言に、私の心にスイッチが入りました。
次の日から「アカンタレ忠洋」は、物の怪(け)が取れたように（心から怒りがなくなった）、心の底から自信と勇気がモリモリと湧いてきて、数枚のレコードと（父が作ってくれた）名刺を携えて、その頃やっと日の目を見つつあった「有線放送」の放送所を探して、自己紹介をして「B面だけれど放送して下さい」とお願いして回る作戦に出ました。
先ずは地元からということで、阪神尼崎にある「大阪有線尼崎放送所」に行きました。
「スミマセン、私この曲を作った梅谷と申します。この放送所でこのレコードを掛けてもらえませんか。但し、未だB面なんですが……！」
すると皿回し（有線放送所でレコードを掛ける仕事をしている女性の方をこのように通称で呼びます）のチョッピリ美人のお嬢さんが、
「え！B面ですか？B面は掛けられない規約なんですが……！」
と、けんもほろろです。すると、隣に居た40代の女性が、
「せっかく来て下さってるんだから、回してあげましょうよ」
との援護射撃で、掛けてもらえる事になりました。そしてレコードが二番が終わりかけた頃に、放送所のリクエスト電話がリリーンと鳴り、その話の内容を聞き耳を立てて聞き入ると
「ねぇねぇ、今かかってる曲ははじめて聴くけど曲名は何？」
と、問い合わせの電話です。すると電話の向こうで、
「ねぇねぇ、もう一度掛けてくれる？」
美人系のお嬢さんは、
「申し訳ありませんが同じ曲を連続でかけることは出来ません。改めてリクエスト下さい」
と杓子定規の返事です。すると救世主の40代の女性が
「良いんじゃないの！」
と言って、電話を替わり、
「もしもし、この曲は“おもいで酒”という曲で、歌手は“小林幸子さん”です。それから、この曲を作った作曲の方が今し方、放送所に来られて、今ここにおいでになります。あなたはどちらのお店の方ですか。ラウンジ“カルネ”さんですね」
こんなやり取りがあって、アカンタレ忠洋の最も苦手な初対面の方と電話で話すハメになったのです。電話の向こうではタバコで喉を荒らしたカルネのママが、
「オタク名前何と言いはんの？（梅谷忠洋と申します）ものゴッツゥエエ曲やないの。絶対大ヒットするから頑張ってヤ！ところで声聞いてると大分若い方やね。おいくつ（25です）え～！そんな若い歳で演歌をつくったんか。凄いやんか！期待してるで」
こんなやり取りがあって、尼崎有線放送所を後にしようとしたその時、
40代の皿回しさんが、
「ちょっとアドバイスやけど、うちらの規約ではさっきも言うた通りB面は掛けられへんねんやんか。でも、抜け道を教えたるわ。なんか手土産持って行ったら、その限りやないで……！」
と言うことで、梅谷忠洋はそれ以後、賄（まいない）がこの世でシッカリと横行することを知ったのでありました。
この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/
