M&Uスクール

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今週の喝 第892号(2022.06.27~07.03)この世は全て催眠だ(631)〜 B面は妾(めかけ)の子(丁寧にされない)!〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(631
B面は妾(めかけ)の子(丁寧にされない)!

 小林幸子さん(サッチン)の第一プロダクションでの最後の仕事となるはずであった、TBSテレビ昼のドラマ「母子草」のテーマソングの録音の日、プロデューサーのうっかりミスからB面の曲の選定が行われていない事が判明しました。
 そこで偶々レコーディングスタジオに居た総合マネージャーの佐伯さんが、「おもいで酒」を咄嗟に推薦してくれたのです。関係者は誰も当時は無名の作詞家や作曲家の作品を知っている筈もありません。にもかかわらず、B面に採用されたということは、冷や飯歌手の扱いを象徴している出来事です。レコードでB面というのは、単に「裏が空いているから入れておけ」と言うのではなく、何かの運命でその歌が日の目を見るかもという淡い希望も少しは託されておりました。
 美空ひばりさんの「悲しい酒」、ガロの「学生街の喫茶店」、歐陽韮韮(おうやんふぃーふぃー)の「Love is over」など、その露出形態はさまざまですが、これらは皆B面からのヒット曲です。“露出”とは、音楽界のポップス用語で、世の人達にアピールすることを言います。
 と言うことで、我が「おもいで酒」B面と言えど一応レコードに録音される事になりました。この辺りは第一プロの佐伯さんの長年の経験と勘だと思います。
 「先ずは露出まで持ってゆき、その後はその歌の持つ生命力に委ねる!」
 そして、B面の録音日、サッチンもA面にOKが出たので気が緩んだのでしょうか?寝冷えから喉を枯らせてしまい、キー(音程)チェックもできない状態だったそうです。(私は駆け出しの作曲家ですから、録音には呼んでもらえませんでした)そして、録音当日、大変なミスが判明するのです。アレンジャー(編曲者)の薗宏明さんに渡したデモンストレーション・テープ(神戸国際会館大ホールでの録音)が撓(たわ)んでおり、それを基に編曲したのでニ短調になっておりました。そして、出来たてのカラオケでサッチンが歌ったのですが、最低音のレ(d)が低すぎて声が出ないのです。これも、彼女の寝冷えの所為ですが、B面の曲にカラオケを取り直すなど余分な費用を掛けられる筈がありません。その時テープレコーダーの係のスタッフがきわどいアイデアを出してきました。

★★禍(わざわい)転じて福と成す……!?★★
 今なら、電気的に簡単にKey Changeできますが、当時はプロのスタジオといえども、そのような便利なものはありません。ではどんなアイデアを出してきたかというと、サッチンが最低音がキッチリと出るところまで録音テープの回転速度を上げて音程を引っ張り上げるという荒手の方法でした。こうすれば確かに音程は引き上げられますが、その反面、演歌特有の小節(こぶし)が廻しにくくなります。演歌と言えば小節をきかせて都はるみさんのように左斜め上を指さしながら唸って終わるのが常套でしたが、それができません。しかし、そこはB面の強み?(どうでも良い楽曲;妾の子)です。少しずつテープレコーダーの回転を上げていって、サッチンが調子よく「おもいで酒」の最低音が出るところでテープレコーダーの回転速度をロックしたのです。彼女のこの日の声の調子はEbとE(ミのフラットとミ)の中間でした。私がレコーディングが完成した初めてのデモテープを聴いたとき、何調でアレンジしたのか分からない位、4分の1音(半音の半分)近くズレているのです。それだけではなく、そのほんの少しの回転の早さのためサッチンは、“彼女の十八番(おはこ)の小節(こぶし)がほとんど廻らない”のです。それでも、そこはB面です。3Take(3回)でディレクターからOKが出たそうです。(本来なら最低20Takeは取り直しするでしょう)
 そのデモテープをはじめて聴かされた私は、以下の事を疑問に思いました。まず、
 ①(とても生意気ですが)今迄の人生で大学受験以外は王道を歩んできた私の音楽生活において、初めて作った楽曲が、“なんでB面”……。作詞の高田先生は、盟友の第一プロの佐伯さんから「レコーディングがサッチンで決まりました」としか聞かされていなかったのです。この事は非常にショックでありましたが、後にこれがトリガー(引き金)となって私の行動喚起をします。(それは後日のお楽しみです)
 ②サッチンもレコーディング完成のOKサインを貰ったものの、後で自分の歌を聴き直すと、小節がぎこちないことが本人も気になりだして、私にどんな印象を受けたか尋ねてきました。
 当時の私は演歌というジャンルをほとんど知りませんでしたので、彼女が気にするほど小節は気になりませんでした。それより、歌全体のKeyの方に心を奪われました。

 その結果、今皆さんが耳にする「おもいで酒」になったのです。演歌が難しく感じる根本原因は、その煌(きら)びやかな小節廻しにあります。そして、サッチンはその名人芸とも言える小節廻しを見初められて古賀政男先生の内弟子になったのです。それがレコーディングテープの速度を上げたため彼女のアイデンティティーが思う存分発揮できず、素人には唄い易い感じに仕上がったのです。人間というのは、その個人が持つ得意の箇所を「それみよがし」に披露することで、かえって問題をややこしくしてしまう代表の様な事象です。
 ま、こんなことが皆さんの耳に届くまでにあり、これがあらゆる事象に作用して、日本を代表する楽曲になった(自画自讃で申し訳ありません)のです。

 

   この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/