M&Uスクール

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今週の喝 第888号(2022.05.30~06.05) この世は全て催眠だ(627)〜初めの歌手はシャンソン歌手〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(627
初めの歌手はシャンソン歌手                                                                         

 さて、ニューソニック・ジャズオーケストラ専属の方による編曲が完成した「おもいで酒」ですが、モニターしてみてアレンジャーの方には申し訳ないのですが、スタイルがもの凄く古いのです。今世間に流れている「おもいで酒」のアレンジは、後に知り合う“薗弘昭(そのひろあき)”さんのものです。
 そして、その古いスタイルの編曲にのせてこの“演歌”を唄う歌手が高田先生が自分の持ち番組で時々用いてた“シャンソン歌手”の“逸見朱子(いつみしゅこ)”さんというとてもチャーミングな方になっていました。番組は伊藤ハム提供「歌のゴールデンショー」。そして、収録は、朝日放送の専属ステージである朝日放送ABCホール!
 指揮者の白井さんのタクトが振り下ろされると、アルトサックスがイントロの主旋律を咽(むせ)び泣くように歌います。そして、いざ歌に入った後、私は聞いていた座席からずり落ちました。
 なぜなら、逸見朱子さんはジャンルがシャンソンである故、小節(こぶし)が全く廻らず、すこぶる楽譜に忠実に唄う方です。その日、如何に昭和と謂えども
「こんな古いスタイル、そして楽譜通りでは絶対に世に受けない」
と直感しゲンナリとした気分でホールを去ったのを覚えています。この曲を作る時、私は大好きな歌手であった“島倉千代子”さんをイメージしていましたが、あまりにもかけ離れていたため、そのショックは相当のものでした。
 そんな時、歌手を選んだ高田直和先生も同様に感じ、また逸見朱子さんを連れてきた、第一ブロダクションのマネージャー・佐伯氏と、「これでは商品にはならないね」と楽屋で話していたそうです。この佐伯さんはマネージャーとしては辣腕の方で、高田先生とはウマの合う方です。後にお目に掛かった第一印象は、一日にモアというタバコを六十本は吸うヘビースモーカーで(それもタバコの先1~2㎝で次のタバコに灯を付けるチェーンスモーカー:それが元で昭和55年に肺癌で逝去)、いつも黒のスーツに身を固め、キザでハンサムな芸能界の代表のような方でした。
 ここで、高田先生と佐伯氏の根性に火が点いたのです。佐伯氏曰く、
 「この歌は、今までにない独特のフィーリングを持った演歌なので、慎重に歌手を選べば世に出るかも知れません。私に心当たりがありますから、任せて下さい」

 

★★感動の歌唱力の持ち主★★
 昭和53年秋の出来事です。
さて、ここから生命力のある楽曲というのは、それこそ大きな巻き込みのエネルギーを発揮し多くの人間の人生を変えて行くのです。
 第一プロダクションは、千昌夫さん新沼謙治さんなど有名歌手を多く抱える東京は六本木近くの溜池にあるプロダクションです。ここに今や風前の灯火(ともしび)の場所に置かれた歌手・小林幸子さんがいました。彼女は後に流行語にまでなった「苦節15年!」……日本が誇る大作曲家・古賀政男先生にのど自慢で見いだされ9歳の時に新潟から上京し、「うそつき鴎(かもめ)」でデビューした鳴かず飛ばずの歌手でした。
 佐伯氏は、「とにかく歌は上手いから、一度唄わせてみよう」という事になり、神戸国際会館大ホールで年に一度行われる「歌のゴールデンショー」のステージバージョンに連れてきたのです。この時は、先回の逸見朱子さんの例もあるので、私は練習から立ち会う事にしました。
 編曲は以前のままでしたが、ニューソニックのアルトサックスの咽(むせ)び泣きのイントロの後、小林幸子さんの“むりして飲んじゃ”の歌が始まります。その時の印象は44年経った今も身体で覚えています。頭の先から足の先まで電気が走ったような衝撃に打たれました。言い様は単純で申し訳ありませんが、とにかくその歌声、小節(こぶし)に「感動」するのです。当時、彼女は私より1才年下の24才……ありきたりな表現ですが、演歌を歌うには“脂(あぶら)ののりきった年齢”で、体力、気力共に素晴らしい才能の持ち主でした。プロデュースをしていた高田先生も同じように身体を電撃が走ったようで舞台の袖でポカンと口を開けて彼女の歌に聴き入っていたのを今も目に焼き付いています。
 その時の演奏は、今彼女が歌っているよりもう少しスローでしたので、思う存分小節(こぶし)を廻して歌えたので、それは演歌としては天下一品の仕上がりでした。思わず、自分の曲に涙したのを思い出します。リハーサルが終わって、小林幸子さんは、自分の歌の注意事項を聴きに来るとても素直な姿を見せてくれました。自分が作曲した楽曲を私の想像以上に表現してくれる歌手……これぞプロの世界と感動した瞬間でした。

 

   この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/