M&Uスクール

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今週の喝 第869号(2021.12.13~12.19)  この世は全て催眠だ(610)〜現地は戦時体制〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(610
現地は戦時体制

 ドイツ・フランクフルトで丸一日のトランジットの間、ベートーヴェンが一時住んだ家(今は博物館)を訪れ、楽聖の空気を感じて、いよいよフランクフルトから我々を迎えてくれるルーマニアの首都ブクレシュチ(ブカレスト)に向かって空路2時間弱の旅です。そして、滑るようにプロペラ機は滑走路に降り立ち、タラップを降りた途端仰天したのは、飛行機を取り巻いて多くのルーマニア陸軍の兵士が銃口を我々に向けて立っているのです。
 その時、飛行機の中で通路を挟んで隣に座っていたユダヤ人らしき叔父さん(長いあごヒゲと帽子でそう思いました)が近寄ってきて、私の耳元で小声で囁きます。
 「このまま、何もなかったように真っ直ぐ空港ビルへ進むんだよ。そして、空港係員が色々と尋ねてくるけど、絶対に政治的ポリシーや思想については話してはいけないよ」
と教えてくれました。相手は片言の英語で私に示唆してくれたのです。私は、英語などトンチンカンであるにもかかわらず、緊張の中での囁きは、驚くほどその意味が理解できたのが不思議でした。
 そうこうしている内に、空港ロビーを出ると、そこにはあの懐かしいマエストロ・イオネスク・ガラティ氏が英語の通訳の女性アンネ・リーさんを伴って待っていてくれました。
 アンネ・リーブクレシュチ大学の英文科の3回生で、今度の旅のお世話をしてくれるというのです。彼女は学生であるにもかかわらず、まるで日本女性のように優しさと気品に満ちたドイツ系ルーマニア人で、日本に憧れていると話してくれました。
 その日は、ホテルで休憩して、翌日午後から早速コンディション調整を兼ねた練習を、コンサート会場で行いました。気合いの入っているメンバーは、ほぼ一通り通し稽古をしただけで、宇宿先生もOKを出し、練習(ゲネプロ)は午後4時前に終わりました。こんな不思議な事は初めてでした。

 

★★万雷の拍手が鳴り止まない熱狂的コンサート★★
 驚いたことに、本番は午後9時開幕と知らせが入ってきました。日本とは習慣が違い、彼の地ではみんな一日の疲れを夕食と共に拭い去り、心を静めた後にコンサートを楽しむのです。私たちはコンサートまでの間に、一旦ホテルに戻り、軽食を食べてシャワーを浴び本番までしばしの休憩。とても落ち着いて本番を迎えられること、本当に音楽を楽しむ文化があることに感動しました。
 プログラムは、私のフルートソロで始まるバッハ作曲「管弦楽組第二番曲ロ短調」中島広子さん(ヴァイオリン)ソロのバルトーク作曲「ルーマニア民謡舞曲」、次にコンサートマスター・松永みどりさん(ヴァイオリン)のソロでヴィヴァルディ作曲「四季」、そして、我がヴィエール室内合奏団の十八番(おはこ)、チャイコフスキー作曲「弦楽セレナーデハ長調」のプログラムです。
 私たちは快い緊張の中、スタンバイしていた時のことです。劇場のマネージャーがニコニコと笑みを浮かべて私たちに、
 「今日は、観客の中にチャフセスク大統領のご令嬢が聴きに来て下さってます」
という思いも掛けないVIPの来場に益々モチベーションが上がりました。
 そして、午後9時の開演と同時に、バッハ管弦楽組曲の序曲からコンサートは始まりました。生まれて初めての海外での演奏、そして既に宇宿先生の指揮で30回以上は演奏したであろうロ短調組曲です。渾身の演奏が出来たと自負して、終曲「バディネリ」が終わった途端、まだコンサートは一曲目で開幕したばかりなのに、会場は割れんばかりの拍手で、私は何度もステージに呼び戻され、宇宿先生より予定になかったアンコールの指示で、ポロネーズを演奏しました。こうしてコンサートは終曲のチャイコフスキーの弦楽セレナーデ……この曲は、今もその当時の録音が劇場側の録音で残っていて、手前味噌ですがたった15名の演奏にもかかわらず、迫力、情熱、情緒などどれをとっても熱演です。そして、アンコール曲のバーバー作曲「弦楽のためのアダジオ」が終わると、会場割れんばかりの拍手です。そして、そのアンコール曲にまたアンコールが掛かり、恥ずかしながら用意していた曲がなくなり、一番初めに私が演奏した管弦楽組曲までアンコールで演奏しました。
 そして、時間は午前0時をまわり、宇宿先生は自分の左手の手首を指さして、実際には時計はしていませんが、「もう時間です!」とジェスチャーで示すのですが、舞台下手の監督は、
 「観客が要求しているんだから、もっと演奏しろ!」
と言って、私たちの背中を押します。そうこうしているうちに、件のチャフセスク大統領の令嬢を初め4人の美しい女性が花束を舞台上でくれました。私は丁度、後年悲劇に見舞われたチャフセスク大統領のご令嬢から花束を受け取り、終演は午前0時30分を過ぎていました。

 

    この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/