M&Uスクール

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今週の喝 第862号(2021.10.25~10.31) この世は全て催眠だ(603)〜指揮者室に呼ばれて…!〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(603
指揮者室に呼ばれて…!

 ルーマニアの新進気鋭の指揮者、イオネスク・ガラティ氏が来日し、私たちのヴィエール室内合奏団と共演することになりました。その第1日目の練習で、モーツァルトの交響曲第40番k550のフルートから下ろされた私は、その屈辱の中、忸(じく)怩(じ)たる思いでその練習を聞いておりました。その時の心境は、今も砂を噛む思いで、全くその音楽が耳に届きません。完全に気が動転し、悔しさに冒された心は自分では制御不能です。
 そして、ふてくされていた私にマネージャーの盛田貞代さんが、「マエストロ・ガラティが練習終了後、指揮者室に来るように言ってるからね」
と、耳元で囁きます。私は「今更何のために・・」と言う思いで、ガラティ氏の指揮者室を訪れると、彼は笑みを浮かべてソファーに座るように私を促し、
 「あなたをモーツァルトから下ろしたのは、他の管楽器とバランスがとれないからだよ。それは、申し訳ないがあなたのフルートの響きが煌(きら)びやかすぎる事にある。それにあの曲はフルートだけ一本だからね。
 そこで、提案があるんだが、あなたのフルートはコンチェルト(協奏曲)に向いている。だから、次のコンサートからは、ソリストとしてモーツァルトでもシュターミッツでもいいから、私と共にコンチェルトをやろうと思うけど、引き受けてくれますか」
こんな提案を受け、私はモヤモヤした気持ちがより一層湧き上がったのです。それは、私のフルートの音色が他の楽器の奏者と合わない……しかし、ソロ(独奏)には適していると言われたからでした。このモヤつきは、私が40歳の時(18年後)、ドイツのマンハイム国立歌劇場管弦楽団のオーボエ奏者、ラヨス・レンチェス氏とサリエリ作曲「フルートとオーボエのための協奏曲ハ長調」を共演するまで尾を引きました。
 それは、本場ドイツのオーボエのサウンドとはピッタリとハーモニーが響き合い、レンチェス氏から
 「多くのフルートとサリエリを共演したけど、初めて美しくハモったよ。ダンケシェーン(ありがとう)」
という賛辞を貰いました。

 

★★目指したサウンドに必ず到達する★★
 さてさて、本来オプティミズム(楽天的)な性格の私ですので、モーツァルトの交響曲を下ろされた代わりに、テレマン作曲の「フルート組曲イ短調」をすることになり、ご機嫌でした。この時ほど、自分の性格が“現金なもの”と思ったことはありません。しかし、アンサンブルそのものに合わないと言われたことはショックでした。後に多くの交響曲の第1フルートのパートを受け持ちましたが、現在当時の録音を聞いても、やはりよく聞こえる……いや、耳に届きすぎるのです。私は大きな音を出している訳ではないのに「ビーン」と響いているのです。
 いつぞや、我が師・宇宿允人先生に自分の笛の音について尋ねたことがありました。その時の師の回答は、
 「君のフルートのサウンドは、レンチェスとの共演でわかるように、ヨーロッパのオケそのものだよ。もちろん、アンサンブルという面から見ると、アンバランスかも知れないが、私は何も“ショボい方に合わせることはない”という信念があって君を使っている。むしろ、他の管楽器が君に合わせるようになることの方を選んだ」
本物を熟知したマエストロの言葉に、私は奮い立ったことを思い出します。そして、私も今では師の考え方のように、体(てい)よく平均をとって手っ取り早く間に合わせるのではなく、本物に近づけること、妥協を許さないことこそ重要であり、またそれを一旦完成させると、崩れないことを修得したのです。
 してみれば、このルーマニアの新進気鋭の指揮者イオネスク・ガラティ氏も、鋭い感覚の持ち主である証です。将来は鋭い感覚のマエストロとなってルーマニアのクラシック音楽の世界を牽引して行くように感じました。(そして現にそのようになりました)
 この出来事があって、私は楽器のサウンド、音楽の形にもそれを演奏する人間の精神性や姿勢が如実に反映されることを実感しました。つまり、ソリストはソリストのサウンドを自分のセルフ・イメージに描いているから、ソリスト(独奏者)となってゆく。この気付きは、音楽家のみならず芸術家全般、そして、スポーツや色々な実用的技能習得を目指す者総てに通じます。つまり、自分が到達したい“地点”を明快にすることこそ、物事を始める出発点だということです。目標を明快にすることで、私たちの全神経はその目標を達成させようと総動員されるのです。そして後に分かるのですが、「何故、その目標に到達したいのか」という“目的意識”の加勢を得ることで、自分自身の潜在意識に明快に書き込まれてゆくのです。

 

    この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/