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今週の喝 第814号(2020.11.23~11.29)この世は全て催眠だ(555)〜マエストロの音楽表現に度肝を抜かれ……!〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(555
マエストロの音楽表現に度肝を抜かれ……

 マエストロ宇宿の練習は、その音楽に関する事例表現が非常に多彩で、現在ならセクハラと言われそうな少々エロティックな表現も全く呵責なくおっしゃいました。
 たとえばヴィヴァルディの四季のなかの『春』三楽章にある8分の6拍子の軽快な活き活きとしたメロディーで、2小節目の2拍目を(文章で表現するのは不可能に近いのですが)浮き上がったような拍子にしたいと思うと、
 「そこはねぇ、オッパイの大きな女性が、良い事があって歓びと共に駆け出し、時々立ち止まって自分のオッパイで歓びを噛みしめて抱きしめるように演奏するんだ!」
と言ってジェスチャーを交えて表現するのです。
 私が演奏する、BACH「管弦楽組曲第二番」のポロネーズのトリオの中間部分のrit.(リタルランド)は、本来楽譜には記されていませんが、宇宿先生独自の音楽解釈の発想です。その表現は、
 「重々しいリタルランドが欲しいんだ。たとえばダンプカーが坂道を下っているときに前方に急なカーブが現れた。それを運転手が認知し、安全を保つためにブレーキを踏む。ダンプカーのブレーキは君たちが乗っている乗用車のそれとは違って“排気ガスを使ったブレーキ”だから、坂道でブレーキを強く踏むと、ガッガッガッガと段階的に速度が遅くなる。そんなrit.が欲しいんだ」
といった表現です。
 私は、18歳で自動車免許を取得するほど自動車好きでしたから、ダンプカーの排気ブレーキの掛かり方を楽しげに見ていたことがあるので、マエストロの表現がとても適切に感じたのですが、チェンバロを演奏している長尾憲子さんは、大阪の高級住宅地である帝塚山に生まれ育ったお嬢さんでしたので、ダンプカーは知っていても、それが坂道でブレーキを踏んだときの情景に興味を持つことはなかったでしょう。そんな理由(わけ)で、
 「私(フルート)とチェロ、そして、チェンバロの3人で、シッカリと練習しておきますから……」
という発言につながったのです。

 

★★マエストロは音楽に妥協無し!★★

 私がプロの方々(ヴィエール室内合奏団)との初合わせの日、生意気にも自分達でマエストロの要求をシッカリと理解し、納得してもらえるようにすると約束してしまった訳ですから大変です。
 そして、先のダンプカーのブレーキを知らない長尾さんに、分かってもらわなければならない思案をしていると、
 「梅谷さん、明後日の日曜日はあなたは何をしていますか。もし、時間が取れるようなら、私の家に来て下さって、マエストロがどんな風にrit.を演奏するようにいっているのか教えて欲しいんだけど……」
と申し出がありました。
 今は忘れましたが、その時、私は某(なにがし)かの用事がありましたが、コンサートを最優先に考えていましたので、二つ返事で了承しました。
 そして、帝塚山の長尾さんのお屋敷に到着して驚いたのは、音楽室(練習場)があり、チェンバロも個人の楽器を持っているのです。当時は丁度ポール・モーリアの「恋はみずいろ」が大ヒットした頃で、彼はその主旋律をチェンバロ(ハプシコードともいいます)を用いた小気味良いアレンジでポールモーリア楽団の名を世界中に轟かせました。
 長尾憲子さんは、先般お話しした浅井芳子先生と同い年で、とても柔和で素直な性質の方でしたので、私が一所懸命ダンプカーの排気ブレーキの構造からマニアックに話すのを熱心に聞いてくれました。そして、もう一つ、長尾さんはそれまで弦楽器とはよくアンサンブルをしたそうですが、管楽器はめったにやらなかったので、私の吸う息(ブレス)を意識するとごく自然に音楽の躍動感が出ることを伝えたところ、もの凄く私に興味を持って接してくれるようになりました。
 この時、私も大きな発見をしました。それは、アンサンブルは合わそうと努力するより、息が合い、気が合い、心が仲良しモードになると、相手に対する否定の心や自分の我意識がフーッと消えてゆくことを肌で感じたのです。長尾さんは、私より5歳年長にもかかわらず、また、沢山の生徒を持つ先生であり、色々な演奏家との共演もしている著名な方であるのに、宇宿先生のBACHを理解しようとする向学心に驚かされました。
 この練習の成果は、私にとって2回目の練習で、ポロネーズの例の箇所に差し掛かったとき、先生は何にも言わずにスッとその箇所をパスして行きました。私は先生のその行動に、そのrit.が良かったのか、それとも「これはダメだ」と諦められたのかと迷いました。そして、途中休憩(パウゼ)に入った時、長尾さんと共に、
 「先生、ポロネーズのrit.はあんな感じでよろしいでしょうか?」
と尋ねたところ、
 「私は、音楽に対して決していい加減な妥協をする事はないよ」
と、サラリと言われたのがとても印象的でした。
 こうして、その後2回の練習を経て、いよいよ本番の日がやって来たのです。

 

     この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/