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今週の喝 第813号(2020.11.16~11.22)この世は全て催眠だ(554)〜ヴィエール室内合奏団〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(554
オーケストラは、カンパニーの縮

 ヴィエール室内合奏団は、24歳から26歳くらいの女性が主体になって、それまでの既製のオーケストラのシステムに疑問を持ち、尚且つ真摯な態度で音楽に向かおうとする新進気鋭の弦楽器奏者が主体になって作られた室内楽団です。
 現在もそうですが、どのオーケストラも楽員から選ばれたUnionの代表によって、指揮者の態度や運営に疑問や独善があると見なすとストライキをするという、ま、前時代的な組織形態が今も見受けられます。オーケストラは、素晴らしい芸術家集団でありながら、指揮者(マエストロ)によってはその気の勢いから、強権発動に至る人もいるので、やむなくこのような形態が出来上がってしまったのです。そこで、マエストロ(指揮者)には大きく分けて二つのタイプが存在するようになりました。
 一つは、下手に出て、
 「皆さん、おはよう御座います。今回のコンサートの指揮をする○○です。どうぞ宜しく演奏をお願いします」
というような“お願い型指揮者”!もう一方は、
 「さ、素晴らしい演奏をやろう。ゆくゾ。君たちは音楽家だ、私について来るんだ」
と、楽員を威圧しながら自分の要求を通すヒトラー型です。
 マエストロ宇宿允人は、その音楽の系譜(師匠は近衛秀麿、その師はフルトヴェングラー)からも分かるように、思い通りになるまで絶対に止めない、ヒトラー型のマエストロです。しかし、ただ暴力的な強権発動型ではなく、その音楽解釈は優美さと豪快さがベストマッチングしており、ヴィエールの楽員達は、楽しく扱(しご)かれておりました。
 こんな訳で、オーケストラという特殊な社会も、一般の会社にありがちな、社長と社員の間に横たわる眼に見えないクレバスが芸術活動の障害になっていることが往々にしてありました。指揮者と楽員のどちらが優勢になってもギクシャク感が蔓延る悪癖があるのです。そんな現状を打破すべく作られたのがヴィエール室内合奏団なのです。

 

★★マエストロ宇宿の指揮に、水を得た魚!の如し★★

 オーケストラ(ヴィエール室内合奏団)との初合わせの日、バッハの冒頭のたった13人の弦楽器の斉奏(Tutti)の迫力に、私の脳神経は電撃的Shockに襲われ、それこそ、全く「自分」という感覚がなくなる衝撃の中での練習でした、そこには、「上手く吹こう」とか「マエストロに認められよう」などという小賢(こざか)しい感覚など木っ端微塵に粉砕され、只々、大BACHが精魂を込めて作曲したその精神が私の全身全霊にバイブレーションを与えてくるのです。そして、マエストロの指揮の下に14人の楽団ではなく、“14名で出来たオーケストラという一つの楽器”となって練習会場に天籟の如くアンサンブルが響き渡ったのです。“至福”とはこのような感性で、後に学ぶ“空(くう)”の実感が既に存在したのだと思います。
 先にも申しましたように、宇宿先生は完璧なるヒトラー型マエストロでしたが、私の生まれ育った今津中学校吹奏楽部の環境からいうと、私は「水を得た魚」そのものでした。練習は頗(すこぶ)る厳しい面がありながらも、弦楽器奏者全員がよくお練習(さら)いしてきており、もの凄く細かい音楽的ニュアンスに食い付いてゆく姿勢が、私には長年月離れていた旧友に出逢ったような懐かしい感覚で接することが出来ました。みんなを持ってこの楽団に集い、自ら進んで“本物の音楽”を追求しているのです。ここで言う“本物”とは、ギャラのために演奏するのではなく、「BACHの聖霊の呼びかけを今度のコンサートに来て下さる聴衆の皆さんに伝えるのだ」という使命を持った人々の集団です。
 練習も快調に進み、BACHもポロネーズ(ポーランドの舞曲)に入りました。このトリオ(中間部)は、チェロの主旋律の上をチェンバロがアドリブ(演奏者に任されて自由に演奏する)で飾り、フルートがテーマの変奏を華麗に奏でる、たった三人だけのこの組曲一番の聞かせどころです。
 その途中のテーマの終わりにリタルランド(rit:だんだん曲のテンポが緩やかになる)があって、次のテーマに入ってアテンポ(a tempo:速度を元に戻す)になるところで、マエストロが「チェンバロがギクシャクしてどうもしっくり行かない」と何度も「NG」が出て、それより先に曲が進みません。
 今度のコンサートは、この管弦楽組曲の他に、モーツァルトが16歳で作曲した「ディヴェルティメントニ長調」、そして、チャイコフスキーの大曲「弦楽セレナーデ」、そしてアンコールにバーバーの「弦楽のためのアダージョ」とまだまだ練習しなければならない曲が多くありました。
 初顔合わせの私が、しゃしゃり出るのはおこがましいと思いましたが、チェンバロの方の何がいけないのかを直感的に感じた私は、無意識に、
 「先生、この部分は練習終了後、三人でキッチリとお復習(さら)いしますので、それで宜しいですか……?」
と、言ってしまったのです。これも、中学校で生徒を教えていた感覚からきたのです。マエストロは、暫し怪訝(けげん)な顔でフルスコア(指揮用の総譜)の上手く行かない箇所を凝視したかと思うと、指揮棒で指揮台の端を「カチッ」と叩き、「任せたよ!」とボソッと言って、次の楽曲に進んだのです。さて、生意気にも大変なことを言ってしまったと思っても、それこそ後の祭り!マエストロが気に入るように演奏できなければ、ヒトラーの本性が出て、何が起こるか分かりません。それはもう、冷や汗タラタラです。

 

     この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/