M&Uスクール

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今週の喝 第795号(2020.7.13~7.19)この世は全て催眠だ(536)〜「どこが悪いんか、教えて貰おうやないか!」〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(536
「どこが悪いんか、教えて貰おうやないか!」

 我が今津中学校吹奏楽部は、昭和47年の夏休みの最終日曜日に開かれた吹奏楽コンクール兵庫県大会(今はクラブの数が増えたので阪神大会から始まりますが、この頃は、兵庫県大会が一番始めのコンクール)で、5人いる審査員の内4人までがダントツトップの成績をつけてくれたにもかかわらず、後1人の審査員が県大会から3校が関西大会に進める規約であるのに、何と4位を付けていたことが判明したのです。
 次の日に、得津武史先生も私が中学三年生の時の「涙の仙台コンクール」の悪夢が甦ってきたのでしょう。生徒全員と主だった父兄を体育館に集めて、ことの進捗を説明しました。
 「昨日の県大会、お疲れさんやった。ワシはお前等ようやったと思てる。そやけど、5人おった審査員4人までがダントツ1位の成績をつけてくれたのに、1人だけワシ等に4位の成績を点けた奴がおる。“ウスイ”とか“ウスケ”とかいう名前の審査員や。
 父兄の皆さんにも知っといて欲しいのは、4位というのは、“お前等の学校は次のコンクールに行く資格がない"と言うてるのと同(お)んなじや。
 そこで、今度その“ウスケ”とかいう審査員をうちの学校に呼んで、何がどう悪いんかシッカリと教えて貰おうやないか……!それで、納得がいかんかったら、ボコボコにしてもたろと思てる。
 夏休み最後の31日に来て貰うことになってるから、お前等もそのつもりでおれ!」
 私を初め、卒業生も県大会4位というのは、全てのプライド我が校の伝統を踏みにじられたのです。私も、どんな怪物が来るのか、そして何かがあったときには本気で殴りかかることを心に、その日の午後2時を待ちました。

 

★★「こんな若造に、舐められてたまるか!」★★

 さて、その日の朝は、どんな怪物がやって来るのか、そしてどうすれば4人の審査員がトップを点けた我が校にたった1人“No!”を点けられるのか!私が中学3年生の時、「ジプシーの心が中学生にわかるのか?」と問いかけた山田一雄先生の言葉の意味も、未だハッキリと理解しないまま、私の知らない世界がそこに再び現れたら、また打ちのめされるのではないか等、色々な思いが心を過(よぎ)り、まんじりとも出来ず朝5時を迎えました。
 そして午後になり、吹奏楽部が練習場として使っている体育館で、部員のコンディションを整えチューニングをして、怪物の到来を待ち構えておりました。そうしている内に午後2時キッカリ、時間通り現れた“ウスケ先生”は、年齢30歳半ばで、身長160㎝体重は55㎏くらいの小柄な方でした。そしてマスク(顔)は往年の映画俳優・市川雷蔵を彷彿とさせる美男子で、言葉は明快な標準語です。そして、夏にもかかわらず、長袖の襟無しでモスグリーンのスモックを着て、颯爽と我が今中本拠地の体育館に入ってきました。周りは、我々全日本一の吹奏楽部に“No!”を突きつけた怪物が来るというので、大勢の父兄や卒業生もそのLesson風景を一目見ようと、合奏体型を取り囲むように円陣を組んで待機しておりました。そして、得津武史先生が、
 「みんな、こちらの方が先般の県大会で我々にお灸を据えて下さった先生や。今日は、何がどうイカンかったんか教えて貰う。分かったか!」
と、「紹介」とも「売り言葉」とも取れる言葉で練習は始まりました。
 「皆さん、こんにちは。私はウスキマサト(宇宿允人)と申します。ここにお集まりの皆さんは、先の県大会で私が非常に悪い点数をつけたことで、腹を立てていることと思います。その結果、今日こうして私を招いて下さいました。
 私が思った通りになりました。あなた方は素晴らしいサウンドを持ち、スパルタ教育に耐え、得津先生の言うことを見事に聞ききる能力があります。そんなあなた方は、今以上に素晴らしい演奏をする可能性があり、このままの状態で満足することが惜しく感じられたのです。あの日の成績は、他の中学と比べて点けたのではありません。あなた達ほどの技量と実力を持っていながら、あの演奏は怠けていると私の眼には映ったのです。他の中学校は、そんなに練習を重ねている訳でもなく、技量も下手くそなのに、一所懸命さが感じられた。だから、こうしてあなた達にLessonできれば、それが伝えられ、もっと良い演奏が出来ると思って、結果的に4位の成績を点けました。
 この吹奏楽コンクールも、仙台での全国大会での教訓を活かし、点数の合計だと1人の審査員の影響が大になるので、今では順位だけで決まるようになりました。だから、私が4位を点けてもあなた方は関西大会に出場できます。さぁ、本物の音楽で素晴らしい成果を挙げてください。」
と、中学生にまるで大人を諭すように、自分の意思と意図をシッカリ伝えて下さいます。それを聞いていた私を含めたギャラリーも思わず頷いて、どんな新しいことが始まるのかという“期待感”に、それまでの憎悪が変わってゆくのが分かりました。
 「先ずは得津先生の指揮で、リヒャルト・ワグナーのマイスタージンガー“第1幕への前奏曲”を聞かせて下さい」
そして、得津先生も、どんな才能があるのか分からないけれど、こんな“若造”に舐められてたまるかといわんばかりの迫力で、渾身の指揮で生徒達を引っ張ってゆきました。
 それを聞いていた私も、
 「これぐらい精魂を込めていれば宇宿先生にあんな点数を点けられることはなかったのに……!」
と思う、会心の演奏でした。

 

       この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/