M&Uスクール

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今週の喝 第355号(2012.2.6〜2012.2.12) この世は全て催眠だ(97)〜自転車に乗る技術は、複雑多岐にわたる。しかし……〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの?

この世は全て催眠だ(97
〜自転車に乗る技術は、複雑多岐にわたる。しかし……

 マイケル・ポランニーが提唱した「暗黙知」について、今回はビジネスとの関係をお話ししましょう。
 本屋に行けば「How to本」のコーナーが設けられている程、ゴルフ上達法、楽器上達法、料理上達法など方法を説いたものが多くあるのに、サイクリングなどの楽しみ方の本はあっても、「自転車の乗り方」の類いの本はほとんど見かけません。
 この不思議を考察すると、読んで考えていると転倒してしまうのと同時に、字も読めない子供がスイスイと乗ることが出来てしまうからだかと私は思います。字も読めない内に自転車は乗れる……これこそまさしく暗黙知の見本のような現象です。
 自転車を乗りこなすには、数々の難しい技術があるにもかかわらず、それを言葉で説明することは非常に困難です。人間の身体は、頭脳を通してしっかりと理解されなくとも、まったく暗黙の内に複雑な制御を実行するプロセスが常に作動しているため、自転車の制御が可能なのです。
 これは、人間の全ての動作に関して同様に起きていることなのですが、成長するに従って、理性的(明示的)な理解が動作をも決定付けるような錯覚をするため、ゴルフ本や楽器本が作られたのです。ゴルフや楽器は、その論理が本から習得できても、技を修得するのは、五感感性の反応から暗黙知を揺さぶる以外無理です。
 私が、中学二年生の時、なけなしのお年玉を貯めて買った「フルート教則本」を眺めていたら、得津先生がやって来て、いきなりビリーッと破られてしまいました。先生曰く「本を読んで、楽器が上手くなるなら苦労せんわい!」……(>_<) 

=修得とは、暗黙知によって為される=
 「暗黙知」は、ある人の顔を、他の何千何万と言う人々の顔の中から認識できることが原点となって、研究が進められました。
 現代社会に生きる人間は1995年以降インターネットの普及やネットワークを活用して情報を早く広く共有したり、知恵を出し合って仕事をするなど、組織単位で一体化することが成果に繋がり、組織力の向上がITの普及によって飛躍的に進むと期待されました。
 そして、組織内で活躍しているベテランの人達が、長年経験と勘を養ってきた内容を、エッセンスをマニュアル化しサーバーに蓄えておけば、いつでも誰でもどこででも、簡単にコンピュータネットワークで共有できると考えられたのです。マニュアル化するときには、必ず言語化しなければコンピュータに記憶させることは出来ません。この言語化された情報を「暗黙知」に対して「形式知」と言います。
 ところが、結果は皆さんご承知のように、そうは問屋が卸しません。我々日本人は、特に形式知化を進めるのが苦手な民族のようです。それは、伝統芸能や伝統工芸、職人の世界では、師匠の技を見て盗むという形で、技能が伝承されてきました。そして、己自身は鍛錬に次ぐ鍛錬で師匠に追いついていったのです。ここには、考えて分析したり、そのエッセンスだけを抽出するといったことが不可能なくらいその情報量は膨大なものとなります。従って、昔から「習うより慣れろ!」「学ぶとは真似ぶこと!」という格言が主流を占め、言葉や部分的教示は“下卑たもの”であるかの扱いを受けました。
 ビジネスの現場に於いても、事務処理や計算事はマニュアル化・標準化できますが、新入社員や中途採用者、人事異動での新しいメンバーが組織に加わったときに、「これを読めば全体の様子が分かり、あなたはスムーズに組織の一員となれる」と言った「形式知」化したものは、まったくありません。
 日本企業が発信し世界共通語になった言葉に「Nemawashi=根回し」がありますが、これこそ、営業マンが自分の人生を傾注して体得した「経験と勘とコツと度胸」の上に成り立った日本独自のビジネス・スタンスなのです。
 形式知化は、あくまで設計図の役割でしかありません。それを実際のビジネスに応用し、完遂するのはやはり「暗黙知」の力を借りなければならないことを自覚しましょう。一度自転車に乗ることが出来た人間は、己の体力の限界がおとずれるまで必ずしっかりと乗りこなせるように、暗黙知にインプットした情報は、あなた個人の占有です。まさに、修得とは暗黙知のなせる業なのです。
 このことを理解して、暗黙知と形式知を上手く使い分けては如何でしょう。

 ●訪問先へのアポ取り  ●電話のかけ方
 ●資料の作成      ●訪問先への礼儀
 ●業界に対する理解   ●事業モデルの提案
 ●アドバイスの要領   ●事業環境や事業戦略の把握

など、全てセンスの問題と言われそうなことですが、ここにしっかりと暗黙知のパワーを発揮することこそ、自身のアイデンティティ習熟の鍵なのです。

この続きは、また来週のお楽しみ……('-^*)/