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今週の喝 第176号(2008.9.1〜2008.9.7) 〜偉人に学ぶ……白隠禅師(28)〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる
潜在意識ってどんなもの?

偉人に学ぶ……白隠禅師(28)

 先回、このコラムを書いてから早一週間が経ちます。その間に、我が父・梅谷郁郎が逝去いたしました。葬儀は、白隠禅師ゆかりの禅寺、西宮の海清寺僧堂で行いました。
 思い残すこと 一つなし
   白雲の悠々として 山を離れむ
 父が生前愛したこの詩の通りの堂々とした一生でした。母が言うには、なくなる前日、病院を後にする時「今日は地蔵盆やから、しっかりとお祭りしておいで」と言って笑顔で見送ってくれたそうです。そして翌二十五日医者も気付かない間に、眠るように息を引き取りました。本当に突然のことでした。
 人は誰しも、遅かれ早かれ死をむかえます。にもかかわらず、人間は毎日毎日を暮らすための命の司令塔である「心」を本当にいい加減に扱っていますそして、身内や自分に厄災がやって来た時、アタフタと嘆き、悲しみ、苦しみ、悶えるのです。心が平常であるためには、常に自分の外側ではなく、内側の精神を正しいものにしておかなければなりません。そのためにも、我々は日頃より他人に起こった事を己が事のように、また、世の摂理や習わしを、常に自分の心に反映し、覚悟を固めて日々を幸せに生き抜いてゆかねばなりません。
 葬儀は、慈応山観音寺の春見正道(かすみしようどう)師により行われましたが、朗詠されるお経に、延命十句観音経そして、白隠禅師坐禅和讃があり、最後に今生の別れの覚悟を仏に向かって、「喝!」と大音声(だいおんじよう)で申し渡して下さいました。

=白隠禅師・坐禅和讃3=
 父は長年、健康自慢でしたが、社会貢献が認められ国家より褒賞や勲章をいただいた晩年は、念願が適い気が抜けた所為か、人工透析の闘病生活でした。その上、1ヶ月前には胃癌も発見され、腹水もたまり、手術ができない状態で、大好きな食べ物も三週間口にできず、抗生物質の投与で意識交錯を起こす状態でした。逝く朝は、機嫌良く透析治療に入り、その後の定期検診時に主治医が聴診器をあてたら呼吸不全を起こしていました。
 私はこの報を名古屋の研修先で受けた時、正直に「お父さんおめでとう。やることをやりきって、苦しまずに逝けて良かったね」と心でつぶやきました。もちろん生きていてくれるに越したことはありませんが、人の寿命にも、医学にも限界があり、ボーダーラインを越えると再び戻ることのない世界です。この摂理を超越できるのは、我々の心が世の真理を捉える以外ありません。
 その悟りの心境を得るために、我々は苦しむのかも知れません。そして足(た)るを知る心境を己自身に得た時、白雲が悠々として山を離れてゆくように、心は清涼と晴れ渡るのです。坐禅和讃にも

 闇路に闇路を踏み添えて
   いつか生死(しようじ)を離るべき

とあるように、苦しみの中から悟りが生まれ、それはいつか、生死をも超越した心境を得るのです。
「ええ格好いうて!」と思われるかも知れませんが、私は父の存命中、親子喧嘩もよくしましたが、その精神と行動力を尊敬し、酒を飲めば自分の生き方を語る父の「演説」を全て心に焼き付けておりますので、私の感覚では、正直、父は生きていて、何ら一週間前とは変わりません。まさに生死を離れたと思います。

  かたじけなくも此の法を
   一たび耳に触るる時

 賛嘆随喜(さんたんずいき)する人は
   福を得ること限りなし

 いわんや自ら回向(えこう)して
   直(じき)に自性(じしよう)を証すれば

 自性すなわち無性(むしよう)にて
   すでに戯論(けろん)を離れたり

 あなたが人として生まれこの「仏法」を一度でも聞いて、感動し涙することがあるならば、その心が必ず本当の幸せをつかむことは言うまでもありません。まして、自分を省みて、自分の心がどのようになっているのかという在処(ありか)を知れば、自分の心はどのようにでもなる「無性」なのですから、辻褄の合わない理屈に終始することなく、真っ当な考えを持つに至ります。
 すなわち、自分の心の向きが大切なのです。他人の死をいつか自分にも降りかかることと思えない心、人のことをいい加減にあしらってしまうような心に気付き、この坐禅和讃に書いてあるある意味を、心の底から実感として受け入れる能力を持つ人は、自分の人生や運命の成り立ちがハッキリと分かるのです。その時、戯論(けろん)を離れた心があなたのお腹の底からモリモリと湧いてくるのです。
 戯論とは、例えば、トイレはきれい方が良いと思っているにもかかわらず、掃除は嫌いだというような矛盾の心から出た論議や行動のことです。いやはや、人間というものは、自分が痛い目に遭わなければなかなか真理に気付かないようですね。

  いつまでも あると思うな 親と金
        ないと思うな 運と災難


この続きはまた来週……('-^*)/