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今週の喝 第757号(2019.10.21~10.27)この世は全て催眠だ(498)〜音楽室に掛けられた一枚の色紙〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(498

音楽室に掛けられた一枚の色紙

  この道より我を生かす道はなし
         この道を行く
               武者小路実篤

 

 今、目を閉じると、私が中学一年生でフルートを手にして8ヶ月ほど経った12月初旬、一人の和服を着て丸めがねを掛けたおじいさんが私たちの練習場である音楽室に来られました。先輩達は高松で行われた全日本吹奏楽コンクールで見事に一位を獲得し、3年生は残された「優勝報告演奏会」と宝塚大劇場で正月早々開催される「アマチュアトップコンサート」を残すのみとなり、私たち一年生はやっとレギュラーメンバーの仲間入りをした頃です。
 得津武史先生の指導の下、まだまだ下手くそなひよっこメンバーが必死に指揮棒について行く姿を見て、少し涙ぐむ表情で、一枚の色紙に、小高い丘に向かうつづら折りの一本道に、荷車を引く人が小さく描かれ、その上に先の詩を書いて、練習終了後、得津先生に手渡して帰られました。
 そうです。そのおじいさんこそ日本を代表する小説家で詩人の武者小路(むしゃこうじ)実篤(さねあつ)先生だったのです。当時は、その方がどれほど偉大な方かも分からないまま、私の座るフルートの定位置のすぐそばに掛けられたその色紙を、私は毎日、練習に入る前にその詩を口ずさむようになりました。何か分からないオーラをその額から感じたからです。
 習慣とは恐ろしいもので、毎日毎日、この詩を口ずさんでいると、中学一年生の私も、この世には“道”という自分がまだ知らない世界があり、それは私が単にいつも道と呼んでいるものとは全く違うものだろうということが自然に理解できました。そして、色紙に書いてある丘に向かう道の絵はその比喩的表現であるに違いないと、これまた自然に思うようになりました。

 

★★“道”とは人生の大目的★★

 “読書百遍意自ずから通ず”
小学校の時、4年生から6年生までの3年間ずっと私の担任であった匂梅(こうばい)吉章(よしあき)先生(今もご存命で、賀状交換をしています)から言われ続けてきた言葉です。しかし、私は訳の分からない意味や言葉は、それを教えて貰わない限り分かる訳はないと反抗気味に聞いておりました。しかし、ここに来て武者小路(むしゃこうじ)実篤(さねあつ)先生の色紙の言葉を毎日反芻(はんすう)する内に、
 「自分という人間が、大勢の人間の中で生きて行くために、また、認められて頑張って行くためには、今はそれが何かハッキリしないが、“道”というものを見つけなければ、それは叶わない」
と感じてきたのです。不思議な感覚でした。そして、2年生になりコンクールのレギュラーメンバーに選ばれた頃には、わけの分からないまま、
 「先輩の業績を引き継ぎ、それを守り抜かなければならない」
という使命感が必然的に備わってきました。その時、
 「この得体の知れない感覚や、小学校の時には思いもしなかった心の頑張(がんは)りズム……これが機関車のようなエネルギー源であるとしたら、その機関車を走らせる“線路”の役割をするのが、もしかして“道”かも知れない
と、閃いたのを覚えています。その線路の目的地は“コンクール優勝!”とみんなは言うけれど、何故しんどい目をしてまでそのようなことをする必要があるのだろうかという根本的疑問に、得津先生はハッキリと、
 「今津のためじゃ!わしら文化果つる地の人間も、『やれば出来る』ことを世間に示し、人の能力は“出来るか出来ないか”ではなく、“やるかやらんか”で決まることを日本国中に教(お)せたれ!
 お前らがやってる音楽は、それこそ芸術の中でも一番人を感動させるんじゃ。楽器はお前らが怠けたら鈍(なまくら)な音になり、頑張ったらエエ音が鳴ってくれる。これほど正直なもんは世界中どこにもあらへん……!」

 私の道……それは、人の道!人間誰しも、多くの人達に感動を与えることで自分の存在が認められることに気付いた瞬間でした。私にとって、音楽・フルートはその為の手段だったのです。目標は、人に感動を与えること!その感動は、やがて渦を巻いて多くの人達を結集させ、それが社会全体を動かして行く原動力になる事を確信したのです。
 “道”とは、目にはハッキリと見えないけれど、まさに心に感動という心の振動を伴ってその在処(ありか)が分かります。「読書百遍」とは、その内容を理解したいと全身全霊を以て務めたとき、時間と共に自然と心の奥底からまるで“神の声”のように響いてくる振動のことを言っているのです。
 武者小路先生の色紙は、生涯を通じて完遂する“道”探しを私に教えてくれました。もしかしたら、今も今津中学校の音楽室にその色紙は飾られているかも知れません。

 

この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/