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今週の喝 第746号(2019.8.5~8.11)この世は全て催眠だ(487)〜春は「人買い」の季節〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(487
春は「人買い」の季節

 「好きこそ物の上手なれ」vs「下手の横好き」
いやはや、諺というのはいつも相反する内容がありますね。「君子危うきに近寄らず」に対して「虎穴に入らずんば虎児を得ず」など、古人は何が正しいのかと論理的な視点で攻めてくる攻撃型人間を躱(かわ)すように相反するものを作ったのでしょうか……?
 私の考えは、その物事に対するその人間の姿勢如何によって変わると思っています。これは、私の出身校、今津中学校吹奏楽部の在り方から導き出した回答です。公立中学ですから、主だった才能の持ち主だけが入部してくるわけではありません。世間の風評として、以前にもこのコラムに書きましたが、
ブラバンに入ると、練習時間が長いため勉強できなくなる!
などと言われていましたので、人買い(クラブでは新入部員勧誘のことをこのように呼びました)は並大抵のものではありません。
 当時の吹奏楽コンクール(55年前)は、40人編成(今は確か45人)でしたので、初めて楽器を手にした1年生はよほど才能がある人間でないと使い物にならないため、理想は2年生と3年生で40名編成を構成する事が肝要です。そのためには、レギュラーメンバー全員が一人ずつ新入生を勧誘し、その中で約4割から半数が、その厳しさや音楽に対する性格的不適合で辞めて行きます。従って、何があってもレギュラー一人が新入部員一人を確保することが義務づけられていました。
 吹奏楽部は、他の運動クラブなどとは違い、多くの種類の楽器パートに分かれていますので、自分のパートの後輩は自分で見つけなければなりません。歯抜け(パートに欠員があることを、このように呼びます)では、理想のサウンドが出ないからです。従って、入学式を終えたうららかな春は一転して、人買い地獄となるのです。

 

★★夏はハワイの演奏旅行!★★

 40人編成は“必須”ですから、出来る出来ないの話ではありません。やらなければ理想のサウンドが生まれません。そのような時に、「ブラバンにいては勉強が出来ない」という嫌な風評が流れる……決まって、その発信源は吹奏楽部以外の人間の親たちです。どんなところにも、妬(ねた)みや嫉(そね)みで心を汚し、自ら経験してもいないのに、憶測で悪く言う人間はいます。いやはや、我が父もその一人であったことは以前に伝えましたね。後に分かったのですが、その噂の発信源は私の叔母であったから面食らいました。
 何はともあれ、我々部員は“一人に一人”人買いをやらなければならないのです。「もし、出来なかったら……?」得津先生は単純明快な方でしたので、新入部員を連れてくるまで、何日でも練習終了後、1時間の音楽室窓ふき掃除の罰が待っています。従って“出来る出来ない”の話ではなく“やる気があるかないか”という実働に掛かってきます。
 以前にも書きましたが、私が小学生の時には、電話一つ受けられないシャイな性質でした。ですから、勧誘などと人に言葉をこちらから掛ける事など全くもって苦手でした。イヤ、それを通り越して“恐怖”ですらありました。しかし、3階にある音楽室の危険を伴う窓ふき掃除は重労働で、少しでも拭き斑があると何度でも「やり直し!」と罵声が飛んできます。また、サボろうものなら天ぷら棒の嵐です。
 しかし人は、「前門の虎、後門の狼」状態に置かれると、あるとき何かに肩を押されるように「決心・決意」が生まれることをこの時体験しました。2週間近く窓ふきを体験した時、「もしかしたら、一年中窓ふき……?!」という懸念が脳裏に湧き上がり、「これはたまらん!」と思った次の日です。廊下をトボトボ歩く一年生の肩をポンと叩き、
 「僕と一緒に吹奏楽部で日本一にならへんか?
と誘うことができたのです。もちろん、彼の返事は「イヤや!」でしたが、今日の練習後の窓ふきを考えると、徹底してその子に喰い下がりました。
 「ブラバンは勉強でけへん言うけど、みんなで助け合って頑張れるンや。分らへんとこがあったら、みんなで教え合いしたりして、結構エエ成績とってるし、それに夏休みなんかは無茶苦茶楽しい演奏旅行もあるから
などと、不思議にスラスラとシャイな梅忠から言葉がポンポン出るのです。
そして、こちらが熱心になると新入生もだんだん耳を貸すようになり、やがてバッチリと彼と視線が合ったのを今も明快に覚えています。そして、“脇川君”(新一年)は晴れて我がフルートパート(後にオーボエに転向、そして5年ほど前に脳梗塞で逝去。お悔やみいたします)の一員として入部したのです。その時、
 「先輩、部室の前にある横断幕に書いてあることはホンマですか」
という質問が、いの一番にありました。彼は私の説得より、その横断幕のコメントの方が魅力的に感じたのかも知れません。
 「ホンマやで。一緒に行こ……!
私は、彼と握手しながら言いました。その横断幕には、
 「吹奏楽部に入って、ハワイに行こう!
私も得津先生が美術の伊勢昌史先生にお願いして、椰子の葉陰に月(ハワイの現地語で、マヒナ)と星々(スターズ)が描かれているその横断幕をにわかに信じられなかったものですから、2年生の6月頃、得津先生に本当にハワイへの演奏旅行があるのかどうか尋ねました。すると先生は、
 「当たり前やないか!わしゃ嘘と坊主の頭はゆったことがない。みんなハワイへ連れて行ったる
と言う明快な答えに、一同歓声を上げて喜びました。
 そして、その夏休みを利用して2泊3日で、鳥取県の羽合(ハワイ)温泉でタップリと海水浴を楽しませてもらいました。
 この時も、私たちは、やれば出来る!「下手の横好き」などと人は言うが、それはやらない人間の言い訳であることを実感したのでありました。

 

この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/