M&Uスクール

潜在意識の有効活用を教える学校”M&Uスクール”のサイト

今週の喝 第729号(2019.4.8~4.14)この世は全て催眠だ(470)〜さぁ、再出発だ……!〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(470
さぁ、再出発だ……!

 先週は我が父・郁郎(いくお)が書いた当時の吹奏楽コンクールの実情を掲載しました。あの“事件”は、吹奏楽コンクールが大きく様変わりしてゆく引き金になったのですが、それは後日談ですので、今回は、「涙の仙台コンクール」の後半を掲載します。

 しかし負けたのだ。宿舎への帰路、バスの中は全員無言で決して見られたさまではなかった。私は心の中で「泣きたいときは泣け。もう来年のコンクールは始まっているぞ、この涙を無にせず頑張れ!」と叫んだ。しかし、夕食後事態は一変した。今中は技術で負けたのではない、審査方法に負けたのだ。このままくよくよしていては、今迄苦労して今日の今中ブラスを築いた先輩に申し訳ない。今中の伝統が、根性が泣く。一年を362日として、正月以外は木枯らし吹きすさぶ寒中の運動場で、氷のように冷え切ったラッパを手にして涙を流し乍ら吹いたあの曲、顔面汗だらけにして40度を超す暑い体育館で吹いたこの曲、鬼のように感じられた得津先生のシナイ棒、やさしく手をとって教えてくれた石川さん木村さん、練習に明け練習に暮れた一年間、そして得た技術を十二分に発揮した上で負けたのだ。男として何ら悔いる事はない。今日涙をのんだ宮城県民会館で、明日午後4時30分より行われる優秀団体演奏会には、今日の此の悲しみ、此の怒りをラッパにぶっつけて堂々と実力日本一の演奏をしようではないか!そうする事に依り、コンクール関係者に無言の抗議をしようと全員誓ってくれた。
 その輝いた瞳を見た時、今中の前途には洋々たるものがあるのを感じた。子供達が食堂を出る時、得津先生は三年生全員一人一人に握手を求められた。無言ではあったが、その目には、
 「すまなんだ、君たちは実によくやった。先生が悪いんだ。君たちは今年で最後だ、その有終の美を飾ってやれなかったのは誠に残念だ。しかし、来年は必ず勝ってこの仇はとるから先生を許してくれ
と語っておられるように感じられ、この先生の気持ちは三年生にもよく通じたらしく、一人一人強く強く先生の手を握りかえしていた。この様子を見た父兄の目にキラリと光るものが浮かんでいた。
 今中は、今迄はあまりにも恵まれすぎていた。理解ある教育長の物心両面の援助、数多い先輩諸兄の己を忘れた尽力、正に順風満帆であった。今度のことは神のなされた試練であり、また嵐を乗り越えることにより本当の根性が生まれ、真の伝統が芽ばえてくる。この時こそ今中の第二の黄金時代の来る時である。勝負には勝たねばならぬ。負けた者のつらさを今度ほど痛感したことはない。“頑張れ今中”“頑張れ今中” 感じたままを仙台よりの帰路東北本線特急「やまびこ」の車中で記す。 S41.11.21

 

★★審査員、山田一雄先生★★ 

 我が父・郁郎は、この文面からも分かるように、徹底した昔気質(かたぎ)の人間で、義理と人情に厚い昭和人の典型です。このように現実を正視して、そして次にとるべき態度を、我々にシッカリと示唆してくれました。
 後に、落ち着いてこの仙台コンクールの演奏を聴くと、私たち吹奏楽部員はまさに精鋭部隊の兵士の如く、得津先生たち指導して下さった先生方の意向を忠実に再現していました。しかし、負けたのです。それも、後味の悪いモノを残しながら……。
 審査員9人の内、6人が我が今中2人が第三位になった富田中学、そして、たった1人だけが首位を付けた豊島十中が優勝したのです。これだけの材料で判断すると、何やら裏取引の感が匂うような審査結果ですが、そこに一人の審査員の名が浮かんできました。
 山田一雄先生……大阪フィルハーモニー交響楽団の創設者・朝比奈隆先生と並んで日本のクラシック音楽会を支えた名指揮者です。ご自身でも作曲をし、またハープが欠員のオーケストラでは自身がハープを練習して演奏したという希代の音楽家で、また、NHK交響楽団常任指揮者東京芸術大学の名誉教授も務められた、凄い経歴の先生です。
 その先生一人が、審査員の中には「ハンガリー狂詩曲第3番」に満点(30点)を付けた方が2人も居たにもかかわらず、19.5点というすこぶる辛い点を付けたのです。そして、総合点によって順位が決まるきまりだったため、6名が一位を付けた我が校が、たった1名一位を付けた豊島十中に負けたのです。このような事態の中、演奏が全て終わった審査員室では、集計がまとまらず紛糾していたのです。その山田一雄先生の総評は、
 「今津中学の特徴はリズム、テンポが良く、ミストーンも少ないなど、正確な演奏が評価されているが、私は演奏曲の音楽的理解やデリケートな音楽性をもっと表現して欲しいと思う。中学生にジプシーの心がわかるはずがない。そんなことを求めるのは無理だと言ってしまえば、このコンクールの向上も発展性も亡くなってしまうのではないか。今津中学は、優秀なバンドであるが故にこの苦言をあえて呈する
 中学3年の私には、この評価はよく分かりませんでしたが、後に、全国コンクールではなくて、何と県大会で今津中学に同様の苦言を呈し、関西大会出場を許されるのが3校という規約のところ、何と4位を付けた審査員が現れたのです。
 そして、この審査員との出逢いが、私の人生を180度変えることになるとは、夢想だにしませんでした。

 

この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/