M&Uスクール

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今週の喝 第698号(2018.9.3~9.9)この世は全て催眠だ(439)〜無意識に追い込むダブルバインド状態〜

潜在意識の大活用・あなたが変われば全てが変わる

潜在意識ってどんなもの? 

この世は全て催眠だ(439
無意識に追い込むダブルバインド状態

 いやはや、中学二年生にして「ダブルバインド」の憂き目に遭うとは思いもよりませんでした。上級生2人に腹を立てる前に恐怖心が先に立ち、今日はどんなイチャモンを付けてくるのかと怯える毎日でした。
 人の“仲が悪い”という弊害を感受性の最も強い思春期に味わうことになった私は、一つ間違えば、吹奏楽部を辞めていたか、またはそこから逃れるための手段として精神的に「まともな判断を下せない自分」を作っていたかのどちらかです。
 最近のニュースでも、中学生がイジメによって自殺する事件が報道されていますが、私も一つ間違えば、新聞紙面を賑わしている側にいたかも知れないのです。
 ダブルバインド理論の提唱者である、グレゴリー・ベイ-トソン博士によりますと、例えば母の財布からお金を盗んだところを見破られた子供が、母から
 母:「あれ?財布からお金がなくなってる。あなた知らない?
と投げかけられ、
 子:「知らないよ!
とシラを切ったにも拘わらず、たたみ掛けるように
 母:「お金に足が生えたのかなぁ……
とネチネチ白状するまで問い詰める母に対して、
“もはやこれまで”との思いから執る行動は、日本の古くからいわれることわざ「泣く子と地頭には勝てぬ」の通り、相手の意表を突くような大声で「ワーン!」と泣き出し、これに驚いた母親は
 母:「これからは、しては駄目よ!
と、終息宣言を出すようにもってゆきます。
 正直に「盗んだ」と言っても叱られ、黙っていても「隠した」と言って叱られる“ダブルバインド状態”に追いやられた時、そのサバイバル(生き残り)を掛けた行為でその場を切り抜けます。
 それも無意識に……。

 

★★“苦”より気付かされた自分の才能★★ 

 ベイートソン博士の研究では、統合失調症(精神分裂病)等はこのダブルバインドからの逃避行動として起きるサバイバル戦術の場合があるという研究結果を出しています。人間は「万事休す!」と言う状態に追い込まれた時、相手が思いも寄らない行動や状態を作り出す、その中には自分の精神を破壊することもあるというのです。もちろん、分裂病に罹る人間全てがこの原因ではありませんが、ダブルバインド状態から気がおかしくなるのは、想像に難くありません。
 私自身も、一時期、2人の三年生のその日の動向ばかりに気を奪われ、何事にも集中できず学校に行くことすら憂鬱で、登校拒否寸前の心理状態にまで追いやられました。
 そんな時、私の陰鬱な顔からその状況を察してくれたのが母方のトメ婆さんでした。詳しくは知らないのですが、トメ婆さんは若かりし頃、姑(しゆうとめ)にいびられ相当の苦労をしたと聞きます。こんな体験から、私の状況をすぐに感知し、そして、お風呂の中で
 「ター君は、口笛で新世界(交響曲)を全部吹けるくらい、音楽が好きなんやねぇ!これをフルートで全部吹けるまでどんなことにも負けたらアカンよ。人間、嫌なことばっかり考えてると全部が嫌になるさかいなぁ!
この言葉で、私は正気を取り戻しました。
 ブラバン(吹奏楽部)に入るだけで父に大説教を喰らい、お年玉でレコードを買ったといっては「無駄遣いをした」となじられても、私はへこたれず頑張ってきた実績がありました。それは、音楽の持つ魅力を自分のエネルギーで再現したいという“欲求”が踏ん張らせたのです。
 風呂から上がった私は、自室に戻り、自分の右手の拳で自分の頬を力一杯殴ってみました。もの凄い衝撃であったことを思い出します。その時、私の脳裏に、この2人の三年が毎日代わるがわる、何らかのイチャモンを付けて鉄拳をふるってくるのは、自分の側にそれから逃れようとする卑屈性が見え隠れしているからだと感じたのです。そして、鉄拳の痛さと音楽の魅力を秤に掛ければ、比べられないほど、音楽の魅力の方が大きいことが分かったのです。
 ここに、私は希望を見いだしました。私にはすることがある……それは、自分が何よりも美しいと感じ、勇気を与えてくれる“音楽”を極めようと心に決めたことを、再認識した瞬間でした。
 後に知ったのですが、「夜と霧」の著者ヴィクトール・エミール・フランクルが、ナチの強制収容所に収監されながらも、生き抜く原動力になったパワーが「希望と信仰」です。それに似たものを、私は中学二年生で感じ取ったのです。私が「この世に生まれて最も憂鬱な時期」と述懐するあの時節がもしなかったとしたら、自分で言うのもおかしい話ですが、今のように逞しい挑戦心は芽生えなかったかも知れません
 以後、真逆を言う2人が何をしてきても、私は、心の中で「新世界交響曲の第四楽章第一テーマ」をフルボリュームで鳴らすことで、鉄拳の痛さも感じなくなりました。そして、それを繰り返した結果は、とうとうプロの音楽家になってしまったのです。人はそれを“才能”といってくれますが、私は耐えることこそ“才能”だと思っています。

   この続きは、来週のお楽しみ……('-^*)/